遠の朝廷に行く前夜、「すっぽんぽん'ズ」fanのおじさんにCDを売りつけに中洲まで行く。カサデギターラ=ギターの家という店だった。そこで「騒いでる」ということだった。おっちゃんらが「騒いでる」とはいかがなものか?
ビルの5F。ドアを押して入る。演奏があってた。目当てのおじさんはBOX席に座っていて、挨拶をすると2秒ほど凝視された後、「あーあ〜」と思い出される。「CD持ってまいりました〜」と渡す。
「いやー、立派なもんが出来たね〜」と喜んでいただく。「この、お尻はどっちの?」とお約束の質問のあと、演奏が終わり、その知り合いのおじさんのBOXにいた一行は一斉に席を立つ。おれは客人から一瞬にして放置。g、b、dr、g、とあらかじめセットされていたかのように彼らはステージに立ち、カウントもなくビートルズ・ナンバーのメドレーが始まる。お世辞にも上手いとはいえないが、聴くに耐えられないというほどでもなく、これが「年季の技」というものだろう。細部へのこだわりは流石です。とくにコーラス。ちゃんとJOHNとPAULだからね。
ほとんどのみなさんS.27・28年生まれ。長崎の、チューリップのライヴァル「アンクルハリソンの井手さん」と同期かいっこ下。みなさんのオールディーズbutグッディーズ好きは、おれは好意的に捉えてました。少なくともその時は。
他のグループもいて、人が入れ替わると「サッチモ」だったり「誰かに見られてる」だったりズージャ方面の歌い上げ型の人々もいる。ヴェラエティである。その演奏はハウスバンドというよりも有志で行なわれてるのがまあ「ほー」だけどねえ。そのなかにひとり、ずっと出ずっぱりのおっちゃんがいた。LOOKSはまー冴えない。年の頃、おれのいるBOXチームよりは5・6歳上に見えた。禿げ方がなんと言うか、潔いつるっぱげ、でもなく両サイド残る、銀縁メガネと「庶務課長」みたいに見える。
しかしその庶務課長、常連らしく、どんな曲も譜面を見て、まあまあ、ニュアンスOKでお弾きになる。ただ、他の人たちが異様にはしゃいでるのに対して、庶務課長の表情は「しぶい」。なんだか「イヤイヤ」やってる、とおれは思う。おなじBOX席のおっちゃんたちにそのことを言うと「イライラしてる」とのことだった。
実はその店にはハウスバンドがいて、それはマスターと従業員の女の人とワカモノのドラマーだと言う。で、ワカモノのドラマーは来たんだけど、その日はお店大繁盛で、マスターは酒その他の仕切りに追われ、とてもじゃないが演奏はできんみたいだった。で、庶務課長、出ずっぱり。
BOX席のおっちゃんらがニヤニヤして「もーだいぶ溜まっとる」と言ってる。で、やっとひと段落すると、庶務課長、二方向においでおいでをして、おれの唯一の知り合いも呼ばれてBassを持たされた。で、何が始まったかというと「ベンチャーズ」だった。「パイプライン」からはじまって「10番街の殺人」「パフィーディア」「ダイアモンド・ヘッド」と続いた。庶務課長、なかなかリヴァーブの使い方が上手く、6弦を擦って「ピシッ」なんてよくコピーしてる。庶務課長ならではの几帳面さがあった。パチパチ。
その後、また「カレンダー・ガール」やら「エンゲルベルト・フンパーディンク」や「朝日のあたる家」などの演奏をやらされ、庶務課長の顔はまた曇っていくのだった。で、また「無表情になってきましたね」と隣のおっちゃんに言うと「まだ、Walk ,don't run やっとらんもん」と。あ、なるほど。
しかし、博多の中高年、ノリもいいし堂々としてて、ん、大阪にもそんなやつしってるぞ、と思いつく。数日前にあったばかりだったが。解放するっていいことね、しかし。
オヤジたちの悪ノリはエスカレート。「ベッツィ&クリス」が当たり前のように「ベッツィ&クリトリス」となり、最後は「ペッティング&クリトリス」。「クリトリスがコーラスの方やった?」かなんか。オヤジたちの週末はでもまあ楽しそうだったね。博多の夜。