2009年01月21日

オバマへの期待と失望と・まだ早いが

 感動的ではあった、しかし、重たくもあった。

 その感動的な根拠にしかし、なんかちょっとちょっとだった。

 バラク・オバマの就任演説は、選挙中のロック・スター的なアジテーションとはトーンが異なり、ブッシュ時代からの決別と継承という引き裂かれた2つの対極の中で、浮つきのない、しかし、突出するものもない、すでにオバマ自体が手足を縛られたような状態であることが透けて見えるようなものだった。

 現実とはおそろしいものだ。

 初のアフリカ系大統領としてのグロリアスな特殊性に主ねてはこの大統領職はやっていけない。そんな分析がベースにあって、高い期待値をどこか実体のあるものに収斂させる必要がある。早い話、危機的な情況が生んだ初のアフリカ系大統領は、そうではない大統領が出会ったこともない超危機的情況からのスタートになるわけで、最初からその相反するダブル・バインド自体が「彼」の情況だった・ということだ。

 それでも、なお、シニカルに感動的と言えるのは、現実的に、後ろにいるブッシュがほんとにサルに見え、その前大統領がキック・アウトされるに値するサルであることを世界に示すために彼の演説が使われたことだろうか。サルにサルと言うためには、サル語で充分。なのにそのサルを世界は最高実力者として仰がねばならない8年間を過ごすしかなかったのだから。そのおかげで日本だって「派遣村」なのだから。サルを退席させるにあたってあのオバマの一語一語が「立った」演説はもったいないな。

 新聞の見出しになるようなキーになるセンテンスは特になかったが、オバマの言葉はやはり、すばらしいと思った。お祭り騒ぎを求めてやって来たヒトビトにとってはしかし物足りなかったと思う。

 イラクからほんとに16ヶ月で撤退出来るのか。
 アフガンはヴェトナムのようになってしまわないのか。
 市場経済に監督が要る。
 政府は大きい・小さいではなく機能するかどうかだ。
 資源を使うことにより、それを利する勢力の存在。
 自然エネルギーへの傾倒。
 イスラムへの対話の呼びかけ。
 貧しい地域・ヒトビトへのシムパシイ。
 国民に向けての団結と責任の呼びかけ。
 共同体としてのアメリカをリビルドする。
 建国時の原理原則に立ち戻ること。

 異常な盛り上がりこそなかったが、そんな課題(それも緊急の)が演説には盛り込まれていた。

 しかし、歴史とは興味深い。おれたちは、ものすごいオプションを目の前で見ている。9.11がなけりゃ、ブッシュは一期でゴアに取って代わられ、そうなると、今日はゴアの2期目の就任演説だったかもしれず、オバマは民主党の泡沫候補で終わっていたかもしれない。

 その9.11の自作自演説に対してはオバマは懐疑的・と見るが、問題は、ブッシュのその背後にいた超利己主義な誰か・その誰かがアメリカをそして世界を未曾有の混乱に陥れたわけだけれど、そこに対する批判・反省が演説の中になかったことが、すべての上に挙げた問題をうやむやにする可能性を持つ。

 その発語の一つ一つが「立って」いて、その言葉がヒトビトの胸に届く・そんなインプリントがすでに完了しているオバマの演説であるから、こんなことをもっといって欲しかった。

「私たちはこれまでやってきた戦争と言う大量殺人行為を止める。なぜなら、それは軍人のみならず、多くの市民の命を奪うからである」

「そしてイスラエルを無条件で支持することも止める。ガザの市民を殺している戦闘機・爆弾、それらをイスラエルに供給することを止める」

「キリスト教の教えに従い、聖書に手を載せて宣誓した以上、アメリカに比べあまりにも国力に差のある国々に対する制裁は止める。さらにそこで使われる「効率の良い=より残虐な」兵器はもう科学者には作らせない。軍需産業にもう武器は作らせない。世界に武器は売らない」

「世界を「民主化」しようとしない。民主主義の適応がオールマイティとは思わない。これまで独裁国家を「民主化」してきたが、皮肉なことに統計を取るなら、独裁国家の下で殺された人々よりずっと多い人々をアメリカが殺してきていた。「他国」の「民主化」が不可能であることを「学習」した」

「金融工学という名のギャンブルは止める。ヘッジファンドやデリバティヴも、実体のない融資もすべて止める。制度を悪用して巨額の富を得た者はどこまでも追求して罰を受けさせる」

「CO2排出に関する、世界のコンセンサス・つまり京都議定書を受け入れる」

「国連主導を受け入れる」

「日米同盟の重要性は理解するが、日本の平和憲法の趣旨も充分尊重する」

 このようなことをもっと言って欲しかったのだ。言えるのはあなたしかいないのだ/いないのに。

 


 
posted by 浪速のCAETANO at 14:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界・地球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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