彼が結婚したのは知っていた。数年前に円満なカオで制服を着た彼といささかそういう写真にはそんなカオでいいのか?と突っ込みたくなるようなひょうきん表情なヨメの姿があった。彼は自衛隊勤務でたしか救急救命士の資格を持っていたと思う。
もう数千人いる卒業生の中でまあベスト5に入る「おまえなあ」なやつだった。デコトラ好きで高三の時、塾の女の子にしつこく「なあ、トラック見に行けへん」というキマリ文句によってデートに誘う、「ちょ、まてよ」なやつだった。
同学年のやつが店にきて昔話になるとかならず彼と「のだっち」の話題で関係ないやつまで大爆笑となってしまうのだが、まあ、そのぅ、「あいたたた」なり「あ〜あ」なりのニュアンスがその周囲には常に漂う彼だったわけ。塾を始めた前のマンションの時からいたからかれこれ8年間ほど教えたかなあ。
その彼から今年も年賀状が来た。まあ、律儀なやつでもあって毎年、年賀・暑中見舞いは来てた気がする。徳島の駐屯地(自衛隊)勤務だから、大阪とそれにまつわるもろもろが恋しいんだろうなということもわかっていた。
Sくんということにしよう。それは厳密には年賀ではなく、喪中であるための寒中見舞いだった。祖母が永眠したため云々と書かれてあった。そして徳島の住所が書いてあり、「ん?」と思ったのはその次の次の行だった。
夫婦二人の名が列記してあってその次の行;
そこには亜鶴砂・由紀・愛・夢乃・美波と連打で書いてあった。
結婚後2年ぐらいのはずだった。ということは;
「五つ子」やん。びっくりしたー。それとも「双子」生んで年子で「三つ子」か?あるいは「一人」生んでやっぱり兄弟欲しいね、で大当たりの「四つ子」か? 真偽のほどはよーわからん。わからんがしかし。
カラダ張って笑かすやつではあった。しかしあのひょーきんなヨメ、やりよんなあ。「五つ子」ってなあ。しっかし、突然こんなに家族増やしてどーすんの? 排卵誘発剤飲みすぎたかな。たしかに高校生にもなって真冬でも半袖Tシャツの特異体質であったことは事実ではあるが、厚生労働省から表彰されるぞ、キミら、この少子化の折り。
しばし絶句したわけだった。
戦争起きてもキミ自衛隊やめられんなー、しかし。