2018年02月06日

曽根崎キッドの日々 6

 曾根崎キッドが意を決してドアに体当たりをするとドアは開いた。人の気配はなく、直感的にここは地下だと曾根崎キッドは思い、廊下を走った。手が後ろにあるからやや斜交いになって小走りな自らの姿を「おかまみたいである」と曾根崎キッドは思ったが「しょうがないじゃないのよ」と早くも順応しつつある人格のある部分の声に「それもそうだね」と納得しながら廊下の突き当たりまでやってきた。やはりここは最下階で上る階段だけがあり、曾根崎キッドはいつもは一段とばしで上るところを一段ずつ「足上げピッチ走法」で上ったのだった。
 
 それにしてもこの後ろの縛めを解かないことには今後に関していやな感じであることはわかっていたし、ふと冷静になると鼻の詰まりが「もう限界」だった。ここはなんとしても手を自由にしなければ。曾根崎キッドは階段の手すりの角がギザギザなのに目をつけ、階段を上るときに手を縛っている紐をそこにこすりつけた。根気が要ったがなんとかなった。加減を間違えて手首を傷つけてしまったが、今はそんなことよりも鼻の穴問題の解決が先だった。いつもはティッシュをねじりこんでぐるっといくのだが、今は爪のある右手人差し指で同じようにする。曾根崎キッドは鼻の穴がけっこう大きい方だったから、人差し指を突っ込んでぐるっといってみたところ、「あいたたた」鼻の内側の粘膜を引っ掻いてしまった。鼻血が出てきた。せっかく鼻クソクリアしたのに、鼻血が固まっちゃ元も子もない。
 
 しかし、次の優先順位は、とにかくここから出ることだった。
 
曾根崎キッドは、どうして自分がこんな目に合ったかはわからないでいた。見当もつかなかった。トドムンドの社長からは、「四天王寺の駐車場で白いボルボに乗ったおんなに会え。そのおんなに協力してあるものを受け取ってくれ。待ち合わせの合図は無糖のコーヒーである」とだけ言われていた。「みなまで言うな、うっとーしい」というのがトドムンドの社長の口癖であるし、人にものを言うときも「あそこんとこ、これで、な」などと外部の人間なら「はあ〜?」なことも多く、トドムンドのみんなはなんとなく想像でやっているのか、それでもなんとかやれているから不思議だ。基本的にすぐ自分が言ったことを忘れるおっさんだから、ひょっとして曾根崎キッドに言ったことまで忘れていたら・・・などと、ぞっとすることもちらりと頭の片隅に浮かんだが、なんぼなんでもそこまで物忘れは進行していないだろうと気を持ち直した。      (つづく)
posted by 浪速のCAETANO at 04:10| 大阪 ☀| Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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