2018年02月09日

曽根崎キッドの日々 9

 パチンコ用には5千円取っておけばだいじょうぶだろう。おんなに、スニーカーがいいと言うからスニーカーを買って、時計を見ると午後一時だった。
 「きみはおなかすいてないの?」「ビール飲みたい」「ええな」「串カツは?」「ごっつええな」
 おんなはジャンジャン横丁の中へ曾根崎キッドを案内した。何軒か有名な串カツ屋があったのを思い出した。行列の出来ているやや大きい店ではなく、こじんまりした店へと曾根崎キッドは連れて行かれた。24時間ぶりのメシだったから、そして日差しももうかなり強く、汗も出ていたし、一杯目の生ビールは、この世のものとはおもえないぐらい旨かったわけだった。曾根崎キッドは、その店が魚介類に強い店であることを素早く見抜き、ホタテやら、ゲソやらたこやら、サザエやらを食べまくったわけだった。おんなはというとビールを、飲みたいと自分では言ったくせにさほど感じ入ることなく淡々と同じペースで ジョッキを口に運んでいるのだった。

 お腹が落ち着くと、曾根崎キッドは自分の任務を思い出し、しかし、この街には知り合いはひとりもいず、どうすればその白いボルボのおんなと出合えるのか、と考えていた。隣のおんなに話そうか迷ったが、今はそうすべきではないと思った。お腹も一杯になったし、コーヒーでも飲みにいって、それからこのおんなは帰すべきだと、曾根崎キッドは考えた。四天王寺から新世界は目と鼻の先であるから、白いボルボのおんなが新世界に来ないとも限らない。軍資金はパチンコでなんとかなるだろう。あるいは、何度も四天王寺まで行ってみるか。
 焦ったところでどうしようもない。まだ焦る段階でもない。曾根崎キッドは風呂はいってきれいになろうとスパ・ワールドへ行くことにした。「今なら千円」という話だったし、仮眠もできたから。
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 スパ・ワールドへ行くことをおんなに告げるとおんなは、帰る、と言った。曾根崎キッドは、助けてくれたことに礼を言い、まだ本格的に信用するにはいたらないが、この街での唯一の知り合いにまた明日も会ってくれるかということを確認して別れた。おんなの歩く後ろ姿は無表情なその顔とは違って筋肉の躍動感を感じた。(つづく)
posted by 浪速のCAETANO at 05:53| 大阪 | Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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