2018年02月11日

曽根崎キッドの日々 11

 ヅラの黒スーツの背後から忍び寄って、一九の九の先端を指でつまんだ。ヅラの黒スーツは「あれ、どうしたのかな?」という素振りを見せ、右の方を振り返った。そのとき、曾根崎キッドはヅラの黒スーツの頭の動きとは逆方向にその九を摘んだ指を廻した。
 ヅラは見事にずれ、一九の九の先端がヅラの黒スーツの顔に覆いかぶさった。
 「うわっ」とヅラの黒スーツが叫んだ。スキンヘッドが振り返って、事の次第を把握したとき、「・・あにき・・」と言葉にならないような言葉を発した。そのときだった。かかとが地面に着いた老人の身体が、一度すっと沈み、そしてスキンヘッドの腕を奇妙な形で捻りあげながら浮き上がってきた。
 「あいてててて」スキンヘッドの腕は力を失い老人の身体の動きに同調し、引っ張られて前のめりになった。そのとき老人の身体が逆方向に、スキンヘッドに向かって素早く動いた。スキンヘッドの手首だけはその動きについていったが身体は前へ倒れつつあった。矛盾する動きは、より弱い部分を庇う結果となる。スキンヘッドの手首は老人にきめられ、身体の後ろへ、下へと引っ張られ、スキンヘッドの身体は空気の壁に跳ね返されたかのようにバウンドし、体中の関節の力が消え、後ろにもんどりうって倒れた。倒れる際にレジの角で後頭部をしたたか打った。
 
 「けけけ」という高笑いを老人は聞いた。あにきと呼ばれた黒スーツは九をのれんのようにかき分けスキンヘッドが後頭部を押さえ地面でもがき苦しんでいるのを見た。「おのれら・・」黒スーツは老人に向かって近づいた。しかし今、老人は目だけではなく、全身がワイルドだった。黒スーツのストレートを身体を沈めてかわすと、下からあごめがけて掌手のアッパーがきれいに決まり、黒スーツは口から赤い泡を吹きながら一度空中に浮き、どっと倒れた。

 曾根崎キッドは元に戻りつつあった。最後に黒スーツのヅラを取り外し、自分の頭に着け「こんど〜ですっ」と叫ぶと頭を振ってそのヅラを飛ばした。一九のヅラは吹き抜けになっている中央の空間を四階分、きれいな放物線を描いて落ちていき、歩いていた子供連れの家族の目の前に着地した。「ぎょっ」とした顔で父親の男が上を見上げていた。(つづく)

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posted by 浪速のCAETANO at 00:21| 大阪 ☔| Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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