2018年02月17日

曽根崎キッドの日々 17

 さつきと別れて曾根崎キッドは新世界へと戻った。連絡は「新世界キッドの店・ミファソ」で取ることにし、お互いがいなければ、伝言で、ということになった。曾根崎キッドの所持金が少なくなっていた。さつきに借りてもよかったのだが、なんとかなる気がしたから、それは言わずにいた。資金稼ぎだ。新しいめのパチンコ屋へ行くことにした。結構混んでいたが、よさそうな台があった。座ると右側に何か圧迫感を感じた。ちら、と見ると、完全にやくざだった。足をがっと開いているから曾根崎キッドは身体を斜にし、顔を左に向けて打ち出した。早くも大当たりがきた。新しい店はBGMがJポップで最低だから長くいる気がしないのだが、大当たりの球数が多いから本日は短期決戦で早めに切り上げる気でいた。いつものようにタバコをふかしながら打つ。2度目の大当たりもすぐにやってきた。快調だ。大当たりが終わってまた打ちながら片手でタバコに火をつける。「ちっ、ちっ」という音に気づいた。パチンコ屋はノイズの洪水現場みたいな所だから、にわかにはその音の方向がわからないが、耳を澄ますとそれは曾根崎キッドの右斜め後方から聞こえてくるのだった。そこには足をがっと開いたやくざが打っているはずだった。ちらっと振り返ってみた。座った目がそこにあった。その目は曾根崎キッドの目が、視線のターゲットとして10分前からそこに来るはずだったかのような周到さで固定されていた。
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 曾根崎キッドは一瞬たじろぎ、自分はこの男に何か悪いことをしたか、とあらゆる角度から検証してみたが何も思い浮かばず、そして視線を戻したのだった。その時、
 「おい」曾根崎キッドは振り返った。「おい、フクリュウエンて知ってるか」
 「は?」「フクリュウエンや。フクリュウエンはカラダにわるいねん、知ってるか」
「はあ?」「フクリュウエンや。お前が吸うてるそのタバコから出るフクリュウエンが、さっきからずうっとわしんとこに流れてきとんねん。お前、知ってんのか、副流煙がチョクでおまえが吸うてる煙より、一酸化炭素で4倍以上、ニコチン2倍、アンモニアにいたっては50倍やぞ。そんなことすんの犯罪やぞ」
 犯罪やぞって、ほかの犯罪しょっちゅうやってるようなおっさんに言われたないわ、と曾根崎キッドは思ったが、「すんません」と謝って火を消した。不条理に近いものを感じたが、ここはもめるとこじゃないと思ったし、この球の量なら1万5千円ぐらいはありそうだったし、両替することにした。(つづく)

posted by 浪速のCAETANO at 04:21| 大阪 ☀| Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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