2018年02月25日

曽根崎キッドの日々 25

 新世界キッドの顔色が一瞬曇ったのを曾根崎キッドは見逃さなかった。曾根崎キッドは自分の勘に賭けようと思った。
 「おれが四天王寺で拉致されたとき、そいつらの中に、ゆうちゃんがいたし、あの建物から脱出するとき、手引きしてくれたのもゆうちゃんやったし、実は今夜の宿を提供してくれてるのもゆうちゃんなんですよ。拉致したヤツらの一味ってことをおれが気づいてるってことはまだたぶん向こうは気づいてないと思うんやけど」
 「あんた、飛田の広い路の突き当たりのあの家におるんかいな」
 「ええ、あの辺ふらふら歩いてたら、ゆうちゃんと偶然出くわして」
 「えらいとこいってもうたなあ」
 「やっぱ、ヤバいっすか」
 「今日は帰る言うてんの」
 「はあ」
 「そう言うて帰らへんのもなあ。まあ、遅なってもええから帰るか」
 「ゆうちゃんにはそう言ってるんですが」
  新世界キッドの眉間に一瞬深い皺が寄り、その表情はまさに新世界キッド・と曾根崎キッドは思った、がすぐにその皺は拡散し、喫茶店のマスターのおじいさんの顔に戻った。
 「なんにせよ、何時でもええから帰った方がええやろ。まあ、あんたのことはいっつも監視してるやろけどな」
  曾根崎キッドはゆうのいた家で見た新世界のケーブルTVのことを思い出した。
  「ケーブルTVのカメラは何個ぐらいあるんですか?」
  「わしが知ってるのは12カ所やが、その5倍はあるやろな、画面見てたら」
   ということは60カ所だ、少なく見積もっても。今こうしてキッド同士で話をしていることさえ、望遠レンズが捉えているのかもしれない。(つづく)


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posted by 浪速のCAETANO at 00:44| 大阪 | Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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