2018年02月27日

曽根崎キッドの日々 27

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    目をそらさずじいーっと見られるのはあまり愉快とはいえない。が、しかし、今新世界では自分は「かなり有名人」なのだ、と曾根崎キッドは認識を新たにした。そうなのだ・そういうことなのだ。立山をお代わりし、雑炊用のごはんとねぎと卵も注文した。たばこに火をつけ一息ついた。雑炊の材料が来たから、たばこを置き、ごはんと立山少々を鍋に投入しコンロの火を強火にした。すぐに煮立ってきた。卵を溶いて上から廻し入れる。ねぎをぱらぱらと蒔いて素早くふたをし、火を止めた。三十数えて、曾根崎キッドはふたを開ける。卵が半熟で食欲をそそる。「うまそーっ」と声には出さず、レンゲでよそう。濃厚な旨さが凝縮されて、それで曾根崎キッドは立山を飲んだ。雑炊に夢中になっている間、視線と男のことは忘れていたし、それはなんぼなんでも、もうこっちなんか見てないに決まってる・と高も括っていたからだった。
 だから、雑炊を食べ終え、立山を飲み終え、たばこに火をつけて大きく煙を吐き出した時に依然としてこちらを見ていた男の目にはなにかパラノイアックな執着を感じ、背中に、すっと汗が一筋流れたような気になった。曾根崎キッドは悪いことした子のようにあわてて目を逸らしたのだった。
 店を出よう。
 店員に合図をし五千円札をカウンターにおいて釣りも取らず、店を出、ジャンジャン横丁の中を小走りに南へ。地下道を駆け抜け、信号が赤だったけどもクルマに手を挙げながらなんとか路を渡り、さらに南へ進んでパチンコ屋へと飛び込んだ。少し息が切れた。ハネものを探し、その座席の一つに座った。ポケットを探ると五百円玉があった。左上のスリットに入れ、出てきた玉を打ち出す。
 あっという間に負けてしまった。小銭はもうなかったから、両替に席を立った。台も替えよう。ポケットから千円札を出し、両替機に入れる。五百円が二つ出てきた。それをもって馴染みのある台を探した。レレレがあったからそこへ座る。玉を出してレバーを握ったその時だった。すーっと影のように隣の席に誰かが座った。とっさに曾根崎キッドはそちらを見た。
 あの男だった。
「曾根崎キッド・だね」と抑揚のない声でそいつは言った。
「あ・打って打って。終わるまで待ってるから」
 そう言って男はにっこり笑ったが、その目には感情がない・と曾根崎キッドは思った。(つづく)

   

posted by 浪速のCAETANO at 06:10| 大阪 ☀| Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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