2018年03月02日

曽根崎キッドの日々 30

 10人ほどの男女が一斉にこちらを振り向く。一瞬の沈黙の後、歓声があがった。屋上だった。曾根崎キッドは男の後を歩いて大理石と思われる楕円テーブルの勧められた席へついた。そのテーブルには男が2人・女が2人、曾根崎キッドを見つめていた。好奇の目だった。しかし、曾根崎キッドは「人の噂も75分」ということはわかっていたから、熱を持って見つめてくれることはかえってありがたかった。このテの興味はゲインが高けれゃ、サステインは反比例して短いはずだから。
 「なんか、でもふつーだよね」ブロンディみたいなウィッグ(だろう)を着けた女が誰に話すでもなく言った。

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 曾根崎キッドは敢えて無表情を崩さなかった。もうひとり夏木マリみたいな女が「どうぞ」とシャンパーニュを注いでくれた。曾根崎キッドは口を付けた。おいしいシャンパーニュだった。こいつらもあのケーブルTVの映像を見たわけだ。あのインパクトの怪人と今彼らの前のふつーの男、共通点をみんな探っているのだが、そんなものあるわけがない。自分でも見てびっくりしたぐらいだから。居心地の悪い時間を過ごすことになった。曾根崎キッドはもっと強い酒をたくさん飲みたくなった。見回すとバー・カウンターにバーテンダーと巨大なウエートレスがいた。軽く手を挙げると、その巨大なウエートレスは大股でやってきた。きれいに化粧してウエートレスの衣裳も似合ってはいるが「むっちゃおとこやん」と曾根崎キッドは思った。ヒールを合わせると190cmはあるな。胸もぱんぱんだったが、中身は生理食塩水だろう。
 「ズブロッカある?ロック・レモントゥイスト」「かしこまりました」「わたしも」ブロンディが言った。近くで見るとウエートレスのカオはかなりでかかった。
 大企業の会議室みたいなモニターがひとりひとりの前にあった。曾根崎キッドの前にもあった。それはテーブルに埋め込まれていて、「UP」と書かれたスイッチを押してみたら立ち上がってきた。勝手に画像が映りスクロールし始めた。画像を見ていて曾根崎キッドは理解した。このモニターには新世界のすべてのカメラからの画像が映る。そしてその数はざっと今見ただけでも100は下らないようだった。新世界キッドが言っていることは正しく、しかし、そのカメラの数はそれを超えていた。
「あ・安本ブラザーズや」夏木マリが叫ぶ。(つづく)

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posted by 浪速のCAETANO at 01:58| 大阪 ☀| Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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