2018年03月10日

曽根崎キッドの日々 38


    曾根崎キッドが、そこ、であると思った「だるま」から入った路地に、ゆうは倒れていた。鼻から血を流し、口のまわりは青く腫れていた。
「ゆうちゃん・ゆうちゃん」
「キッド・・・・」
「だいじょうぶ?」
「見てわかんない?」
「とにかく手当しないとあかんな」
飛田のあの家まではけっこう距離があるが「ミファソ」なら近い。
「近くに知ってるとこあるから、そこへ行こう」
「ひょっとして、それ、ミファソ?」
「そうやけど」
「そこはだめ。帰る」
「そんなこというても、今のおれはきみをおぶってあそこまで帰れないわ」
「さゆりを呼んで」
「いや、それもいいけど、ミファソで手当しようよ」
「ぜったいいや」
「なんでなん?」
「いやなの」
「ええやん」
「いやっていったらいやなの」
「なんでなん?」
「ノーリーズン」
    押し問答の中、ゆうがやっと自分を出し始めて、曾根崎キッドはなんだか嬉しいような気持ちを感じていた。
「わかった。じゃあ電話するから番号教えてよ」
    ゆうは黙って携帯を取り出した。曾根崎キッドの手に渡った時、すでに呼び出し音がなっていた。しかしなかなかさゆりは出なかった。しかし、ゆうがミファソを拒絶する以上かけつづけるしかなかった。なんで出ないのだ・と曾根崎キッドは少しイライラいたが、それが自分のせいだとは夢にも思っていないのだった。4度目のコールでやっとさゆりが出た。
「あぁ〜ん、キッドね」
    さゆりは洗濯棒に曾根崎キッドを感じた余韻からはまだ醒めていなかった。
「もしもし、さゆりちゃん、ゆうちゃんが・・・・・」
「ゆうさんはもういいの。それよりキッドぉぅ〜」
「どうした、さゆりちゃん、よくないねん、ゆうちゃんがたいへんやねん」
「ゆうさんがどうしたのよ〜。あたしの方がたいへんだったのよ〜。もうばか〜、キッド〜」
    あんな清楚を絵に描いたようなさゆりが、なんでこんなんなんだろう、と曾根崎キッドは思ったが、ん?待てよ、自分はさっきあの高層マンションに連れて行かれたはずなのに、なぜここにいるんだろう・わからないわからない。え・すると・ひょっとすると・この記憶の空白は、ひょっとしてまた、あんなんなっちゃったのか?TV画面の自分の映像が甦ってきた。自分としては「とうてい受け入れられなかった」あんなことになっていなければいいが・・・。そして、さゆりのこの豹変は一体なんなのだ?
    しかし、今はそれ「ちょっとおいといてー」すべきだ。
「いや、あのね、ゆうちゃんが安本やったっけ、あいつらにやられてん。だからさゆりちゃんの助けが要るねん。至急来て欲しいねん」
「えっ。そうなんですか。どこにいるの?」
「だるまんとこの路地やねん。本店の方」
「ゆうさん、だいじょうぶなの。ひどく殴られたの?」
「うん、まあね。だからすぐに来て」
「救急箱持って行くわ」
「そう。急いでね」
「わかりました。すぐ行きます」
    
    やれやれなんだけども、しかし、この状況、自分一人で対応してていいのだろうか? ゆうは厭がっているが、新世界キッドのおじいさんや吉沢さつきに知らせた方がいいのではないか。安本たちは新世界キッドに因縁をつけた。そして、ゆうを殴った。ということは「敵の敵は味方」ということはないのだろうか? 利害関係はそう単純でもなさそうだが、ゆうの拒絶を見ていると。

    曽根崎
キッドは、カメラの存在を思い出した。この瞬間も・・・・。しかしここは暗く赤外線カメラだった。念のため、曾根崎キッドはカメラに映ったゆうたちの角度を思い出して少し反対側に立ち位置を変えた。ただし、この様子はさほど人の関心は惹かないだろう。
しばらくしてさゆりがやってきた。(つづく)

D6EF4BBC-2A0F-4848-B1D5-A0BFB3075975.jpg

posted by 浪速のCAETANO at 04:25| 大阪 ☁| Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。