2018年03月18日

曽根崎キッドの日々 46

曾根崎キッドは少し混乱したが、それは曾根崎キッドがリベラルではないからではなく、その事実の組み合わせによるものだった。「ゆうとさゆり」というのがピンとこなかっただけで、しかしさゆりがそう言うのならそれは本当だろうし、だからといってすぐに「そう、じゃあ兄弟に乾杯っ」など言っちゃうほど曾根崎キッドはバカでもなかった。ゆうべの風呂場の情事の余韻をもっと楽しみたかった曾根崎キッドは今、さゆりとの間に他人を置きたくない・と思い、もう一度二階へさゆりを誘いたかった。もう一度楽しみたかった。

「ゆうちゃん、なんか欲しいものは?」
「なにもいらない。ありがとう」

    曾根崎キッドは、さゆりを探しに外へ出た。朝の川からの少し涼しい風に当たっているのかもしれなかった。大声を出すとゆうに気づかれるから、ホワイト・ノイズの声で「さゆりちゃん」と繰り返した。しかし、返事はなかった。

「お初のコやからねえ、三十でどうです?」
安本兄が携帯の電話口で言う。
「時間はオールナイトでよろしいよ。はい・ほんなら商談成立。5時に送っていきますわ」
「久しぶりの大口やな」安本弟が電話を切った安本兄に言う。
「一石二鳥や」

    曾根崎キッドはこの家の誰かのサンダルが片方落ちているのに気づいた。急いで家の中に戻った。ゆうの寝てる部屋の襖を乱暴に開けると、ゆうが眩しそうな顔で薄目を開けた。眉間に皺がよっていた。
「さゆりちゃんはここで寝たの?」
「なにを言ってるの。あんたとあらためて寝たんじゃないの」
「ちがうねん、上には来てないねん」
「地下、見てみた?」

    曾根崎キッドは返事もせずに地下へと向かい、「秘密の匂いがする」と思った部屋と風呂場を見てみた。誰もいなかった。曾根崎キッドはアタマが真っ白になった。「さゆりちゃん」身体の毛穴が閉まっていき、身体に寒気をおぼえた。
ゆうのところで寝ていない。自分のところに来ていない。約束したのだ、なのに、来ていない。
    
    さゆりの身に何かが起こったことは間違いなかった。あの片っぽうのサンダルが物語る出来事。さゆりは誰かに連れて行かれた・と曾根崎キッドは確信した。

    安本たち以外に考えられなかった。何のために?
    
    嫌な感覚が身体を駆け巡った。(つづく)
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posted by 浪速のCAETANO at 03:59| 大阪 | Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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