2018年03月29日

曽根崎キッドの日々 57

「うわー、すんごいことになっとんなあ、きみ」
「おい・やめろ、はなせ、うわー」
「キッド、ごくろう。こっちはおれに任してくれて、はよ行ったり。もうさつきちゃんらは入った頃や」
「わかった」
「こるぁ、はなさんかい。おまえこんなことしてただで済むと思とんかい」
「ん? なんか言葉遣いがなっとらんなー、このにーちゃん。自分の置かれてる立場に対する認識がやや、主観的やな」ウタマロちゃんは糸を斜め上にくいっと引き上げた。
「ぎゃぁぁあぁー」
「右に行く・と思わせといて、左なんつって」
「ぎょえぇぇぉぅ」
「ちょっと緩めて・ピンと張る」
「ぎぃゃぁあぁ・ぁ・あ」
「緊張に・・・緩和。キンチョー・・・の夏。あっか上っげないで・・しっろ上っげない」
 安本弟は失禁し気絶してしまった。小便の色は赤かった。

 さゆりはさゆりを探し続けていた。しかしここから出る方法はまだわからない。ふと考えた。下のさゆりは敢えて意識を遠ざけているのではないか・と。今頃身体の自由を奪われ、金持ちたちのおもちゃとなっていたぶられているはずだ。感じてしまっては負けだ・とおもったじゃないか。感情を持たないようにしよう・と思ったじゃないか。曾根崎キッドがきっと来てくれることだけを思おう・と決めたじゃないか。そうだ、そうだった。自分が決めたことだったのだ。ということは、下のさゆりが意識を戻さない限り再び合体することはないのだ。
 諦観にも似た気持ちが支配的になったさゆりは、チカラを抜いた。「待つしかないわ」と思った。

 曾根崎キッドはマンションの入り口に立っていた。誰か住人がロックを解除して入るのを待っていた。(つづく)

posted by 浪速のCAETANO at 06:32| 大阪 | Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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