2018年04月13日

曽根崎キッドの日々 70(最終回)---暫定

on the 10th day

 さゆりは市大病院の集中治療室に搬送され、ひどかった出血は止まり、三日目に意識は戻り、正確に言うと目は開けたが、一言もしゃべらなかった。
 さゆりとオトコは「繋がったまま」救急車に乗せられた。さゆりの下になったオトコは哀れ右の睾丸が潰れ、左の睾丸も激しい損傷で、ペニスは、しかし、さゆりの肛門からなかなか抜けなかった。膣痙攣のような情況がさゆりの肛門に起こっていた。弛緩剤を打たれ、やっと外に出たオトコのペニスは「くの字」に曲がっていて、その後急激にくの字のまま萎んでいった。その後どうなったかは誰も他の誰かに尋ねなかった。
 
 さゆりはあの衝撃でさゆりから放り出され、またあの空間に閉じ込められてしまった。ただ、今回違うのは新世界のことだけは見えるのだ。もちろん下のさゆりのことも見える。さゆりがいる空間とはカメラからモニターへ至る電脳空間を含む空間だった。そこは空間とは言えないのかもしれない。粒子の流れの中の小さなポイントに閉じ込められているのかもしれない。あるいは、そのポイントは常に移動し続けているのかもしれない。ものすごい速さで。

 さゆりはその空間に閉じ込められて以来、曾根崎キッドを探し続けた。さゆりはすべてのモニターを見ることができた。しかし、曾根崎キッドはどのモニターにも現れなかった。

 ゆうはさゆりに献身的に尽くしている。三日間とも付き添っている。ゆうの顔の傷は回復し、唇が少し腫れているだけだ。ゆうはおじいさんとの関係を修復しようと思った。仕事を辞めようとは思わないけれど。

on the 12th day;
 さゆりはモニターをものすごい速さでチェックしていた。通天閣のふもと、ミファソの前を見覚えのある後ろ姿が歩いているのを見た。「キッド!!!」と叫んだ。すると、モニターの画像が乱れ、それはすべてのモニターがそうで、しばらくするとさゆりは自分の視界さえ失ってしまった。
 次に目が見えたとき、目の前にはゆうがいた。

 あるモニターに、斜めに三歩ほど歩いては平参平の真似をするオトコの姿が映し出されていた。そのオトコはその動作を数回して、最後に膝をぴーんと伸ばし、そのまま静止し、30秒ほどそのままキープすると首を傾げ、足を下ろすと、なんとなく不満げな様子で、とぼとぼ歩き、地下鉄堺筋線の入り口に消えていった。                          (おわり・続編へとつづく)
  

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2018年04月12日

曽根崎キッドの日々 69

 さゆりは「また落ちる」と思ったが、その前のような孤独感はなく、何かに繋がれているという確信があり、そして落ち方にしても頭からではなく足や腰が何かに引きずられていくようだったから、危機感は感じなかった。そして時間が割れ続け、その外には出ることが出来ないような予感もあり、しかし、こだまし続ける声と同期する身体の奥の疼きにズレはなく、落ちながらも幸せなのだった。割れていく時間の中であるオトコのことを思い出しそうになった。やんちゃでばかで誠実でかわいくて、「でも一体誰だったのかな?」そんなヴィジョンが脳裏をよぎった時、疼きの中心を破滅的にえぐるような衝撃がさゆりを襲った。そして意識はなくなった。

 その横にはオトコがいて、しばらく立ち尽くし、小刻みな足音が始まり、しばらくするとその足音は遠ざかっていった。

 さつきとミファソのおじいさんが部屋の中に入って来た時、部屋の中に甘く気だるい匂いと血の匂いが充満していて、さつきは少し胃がムカムカした。廊下を通ってリヴィングまで行くと、その匂いはさらに強烈で、そしてそこにある光景もまたそうなのだ。さつきとミファソのおじいさんは倒れているさゆりを見て駆け寄った。さゆりはオトコの身体に重なるように倒れていた。ミファソのおじいさんが抱き起こそうとするとオトコの身体も一緒に付いてくる。
 「えらいことになっとんな」
 「さっちゃん,119番や」                        

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2018年04月11日

曽根崎キッドの日々 68

 実際には数秒の出来事だったのかもしれない。
 しかし、さゆりは、時間の袋小路に嵌まり込んで出口のない迷路を彷徨っている。身体の奥の疼きと、そしてその声を伴いながら。時間はどこまでも割れていくのだった。
 
 曾根崎キッドはカーテンから「なんちゃって」と顔を出した。オトコと夏木マリと目が合ったが、「ニッ」と笑ってまたカーテンの中に隠れ、影絵を再開した。

 オトコは「うわっ」と声を出し、その際に足を滑らせ、さゆりの腰を抱いたままあん馬から落ちていく。さゆりとともに。夏木マリはキッチンの方へと走っていく。曾根崎キッドは影絵を熱心にやっている。オトコはひっくり返り、背中から床に落ちようとしている。さゆりとともに。夏木マリはキッチンの中へと走り込む。曾根崎キッドは影絵中である。オトコの背中が床に着く。背中に衝撃が走るが更なる衝撃とはその後のことである。さゆりは手であん馬に最後までしがみついていたから、尻餅をつくようにオトコの上にのしかかる。夏木マリはキッチンの中に隠れてしまう。曾根崎キッドは影絵に飽きてしまう。一体何をしているのか、自分でもわからなくなってきた。オトコは仰向けに落ち、さゆりの尻は繋がったままオトコの下半身を間髪入れず直撃する。男女の悲鳴が部屋中に響き渡る。

 曾根崎キッドは慌ててカーテンを開けるが、そこで見たものは曾根崎キッドをその後三日間、狂わせてしまう光景だった。

 曾根崎キッドはブラジルのサッカー選手がゴールした時によくやる「ゆりかごパフォーマンス」のような赤ちゃんを抱いて左右に揺するように手を動かしながら走ってドアまで行き、飛び出した。ドアの外にはさつきとミファソのおじいさんがいたが、曾根崎キッドの様子を見てただごとではないと思い、横によけようとしたが、その間をさつきとおじいさんを蹴散らすように「うぇー・きょえー・らぇー」と聞いたこともないような言葉を口走りながら階段のドアを開けどこかへいってしまった。                                (つづく)

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2018年04月10日

曽根崎キッドの日々 67

 オトコのペニスの先端がさゆりの肛門に触れた時、カラダが緊張し、肛門が締まった。
「だいじょうぶ・チカラ抜いてごらんなさい」

 言われた通りにした。オンナの声はさゆりを支配していた。さゆりは自分のカラダがふわふわしていて、どこかに飛んでいきそうだった。どこかに留まりたかった。自分のカラダを串刺しにして、そこで固定して欲しいと思った。チカラを抜いてオトコが入ってくるのを待った。

 曾根崎キッドは腰の綱をほどき窓枠に手を掛けた。窓はロックされていなかった。ゆっくりと窓を開け、素早くカーテンと壁の間に滑り込んだ。
 中の三人はそれには気づかず、オトコのペニスを夏木マリが持ちさゆりの肛門へ導いて先端が吸い込まれたその時だった。

 「わんわんわん・わんわんわん」
 オトコと夏木マリはお互いに「ん?」という顔で目を合わせた。窓は西向きで夕日を受け、白いカーテンは黄金色に染まり、その中で動く影があった。それは犬のカタチをしていて「わんわんわん・わんわんわん」と鳴いていた。ただ、その犬は前足と尻尾がなかった。

 カーテンの裏で曾根崎キッドが精一杯の犬の形態模写を試み、結構うまくいった・と思いながら、手で犬の顔と口をこしらえ、「わんわんわん・わんわんわん」と鳴きまねをし、そしてその鳴き声は最後に「わん・わん・あおーーぅ」と何かに訴えるような遠吠えで終わった。

 さゆりは肛門の刺激に感じながら、自分が何かの意志に強く求められている気がしていた。そしてその意志はさゆりの中に入りたがっていて、それを受け入れることがすべてでその他の選択肢は考えられなかった。

    動物が何かを求めて鳴いているような気がした。意志とはその動物に由来するのかもしれない。それでもかまわない。むしろそれがいい・と思った。そしてその意志がさゆりを奥深く貫いたときに、その動物がひときわ高く吠えた。その感覚はしばらく同期した。だが、身体の奥からその感覚が失われていくその時にも動物の声はさゆりの耳奥でエコーし続けた。いつまでもどこまでもその声は消えず、繰り返され、フィードバックされその音量は増していくのだった。
(つづく)
 

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2018年04月08日

曽根崎キッドの日々 66

    さゆりは頬を皮に押し付け、そして背中を反った。それが挑発的なことも分かった上で自分もそうしたかった。もっと尻を高く上げたかったがあん馬のようなものを股で挟み込む形になっていてもどかしかった。しかし、片足ずつあん馬の上にのせようとしてもがいた。その様子にオトコが
「おお」
と声を上げた。夏木マリが
「わかったわ」といい片足を乗せることを手伝った。
 さゆりはあん馬の上にこれほどのいやらしい形はないというほど尻だけを高く上げてそこで静止した。しかし下腹の柔らかいカーブが波打っていた。注入されたアルコールはさゆりの腸壁から即座に吸収され体内を巡っていた。さゆりは酔い出していたのだ。


 周囲の赤い色は突然消え、さゆりは熱いものの中にいた。その熱いものとは自分のことだった。アルコールがめまぐるしく駆け巡っている自分のカラダの中にいた。さゆりは少し安心したが、アルコールはカラダの自由を利かなくさせ、カラダのすべての粘膜の快感を最優先させようとしていた。まだそれに抗うキモチは残ってはいたが、倫理は薬物にあっという間に負けてしまう。さゆりはひさしぶりに一人になった。そして自分のカラダを愛おしく思い、それが他人に最初は強制されていたとしても、自分の快感は自分だけのものであり、それに他人がどんな感情を抱こうと知ったことではなかった。どこまでも尻を高く上げ、内臓までも人目に晒してしまいたかった。そして誰でも何でもいいからその粘膜に刺激を与えて欲しかった。そう思ってさゆりは尻を振った。
「ほら・欲しがってるわよ、サトル」
「今度はそこをやるで。下に降ろすわ」
「ここでこのポーズがいいんじゃないの。あんたが上にのぼんなさいよ」
「そうか」
 オトコは斜めになったあん馬状皮の台の一番低いところに足をのせ、上からさゆりの小刻みに震えるカラダを見下ろした。頬を皮に押し付け呼吸が乱れ、その横顔は悩ましく、柔らかな背中には赤いラインが入り、腰の辺りでくびれ、そしてそこから急激な角度とヴォリュームで二つの丸い球体がそびえ立ち、それらは大きく開いていた。
「角度に無理があるわね・あたしが手伝ってあげる」
 そういうと夏木マリは立ち上がり、キッチンへと消え、エクストラ・ヴァージン・オイルのボトルを手に戻ってきた。掌にたっぷりと注ぎさゆりの尻のうえからそれは細い糸となって肛門に落ちた。さゆりの肛門にオイルが溜まり、そしてそれは呑み込まれた。
「おどろくな」
 残りのオイルをオトコのペニスに垂らし掌でぐるりと全体になじませ、二三度しごき、手で誘導した。窓際で影が動いた。(つづく)

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2018年04月07日

曽根崎キッドの日々 65

「尻尾も素敵だけど、これ忘れてたわね」
 夏木マリは注射器を取り上げ、アナルバイブを一度ぐっと押し込みさゆりに「ひぃっ」という声を出させ、満足したように微笑んで、それからゆっくりと抜いた。「はぁっ」ともう一度さゆりから声が漏れ、頭と腕は完全に沈み、背中は反りその角度は頂点に向かうにつれて高く上りつめ、その腰の細さからは意外な双つの円く豊かな丘がそびえ立っていた。
「この子・いいカラダしてるわよね」
「こいつもそう思ってるみたいやな」
 オトコは股間を指差した。夏木マリがよく知っている、左にやや曲がり、反りあがるカタチに形状記憶されていた。

 曾根崎キッドは窓の出っ張りに足を掛け、よっこらしょ・と窓にへばりついた。そこはカーテンが掛かり中の様子は窺えない。次の次の窓にカーテンの隙間があった。曾根崎キッドは慎重に掌とつま先で窓枠を内側から押し上げるようにしてカラダを移動させた。ゆっくりでないと落ちてしまう。

 夏木マリはさゆりの真後ろに立ち、注射器の先端でさゆりの肛門をちょんちょんし、さゆりに小さな声を上げさせからかったあと、何も言わず先端をブスリと押し込んだ。注射器はほぼ直立し、ピストンを押さなくとも、赤い液体がさゆりの中へと入っていく。
「すごいな」
「いやらしいお尻ねえ」
 ワインがすべて注入されると、注射器を抜き、そのまま放置した。
「もうすぐおもしろくなるわよ」
 兆候はすぐに現れた。さゆりは酒が強くなかった。さゆりの頬に紅潮が見られ、目がとろーんとしてきていた。オトコがかなり興奮しているのが夏木マリにはわかった。先端が震えていた。

 さゆりは自分の存在が消えていく実感があった。下のさゆりとの間の膜が溶けていく・と思った。窓のカーテンに人影が映っていた。
(つづく)

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2018年04月06日

曽根崎キッドの日々 64

 さゆりは他の場所とはどことも違うその感覚が、自分を崩壊させる予感を感じたが、手遅れかもしれなかった。そこを使うセックスがあることはなんとなく知ってはいたけれど、マニアの世界のことで,自分がそんなことをすることになるなどということはこれまで考えもしなかった。
「ほら、もっとお尻つきだすのよ」
 おんなの声が抗いきれない命令として聞こえた。

 さゆりは自分が落ちていると感じた。周りの空間の色はもう真っ赤でその色が上へ上へと流れていたからだ。

「この子、素質あるわ。ものすごい感じてるもん」
 おとこが身を乗り出してきた。おんなは指をゆっくり抜き、さゆりは「ひっ」と声を漏らした。
「今度はこれ」
 おんなは樹脂でできた先細りの器具を手にしていた。自分の唾液をつけ、グロスで妖しく光る唇を舐め、そしてさゆりの肛門へ細い先端を近づけた。

 さゆりはある一点に向かって落ちていた。その一点は肌色だった。果たしてこれから起こることに自分が耐えられるのかわからなかったが、それが運命なら受け入れるよりほかはない・と心に決めた。そう決めた途端、落下が止まった。「あ」とさゆりは声を上げた。

 曾根崎キッドは窓のでっぱりに指の先端が届いていた。しかし、曾根崎キッドにはもうあまり力が残ってはいなかった。しかし、聞き覚えのある声が聞こえ、そしてその声が助けを求めていると思った瞬間に馬鹿力が出た。

 さゆりは天井近くに浮いていた。そして自分が辱められているのを見た。下の自分には黄緑色の尻尾が生えていて、その尻尾はどんどん短くなっていた。横向きの自分の顔から切なさが感じられ、双子の姉のような気持ちになった。(つづく)

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2018年04月05日

曽根崎キッドの日々 63

    このままではヤバい。綱は揺れ幅が大きくなってきた。顔に液体が当たる。雨か・と思えば、ウエイトレスのつばだった。
「お前、サイテーやな。そんなコドモみたいなことして」
 ウエイトレスはへらへら笑いながら
「今度は痰いくぞ・かーっ・ぺっ」
 曾根崎キッドは身をかわしてかろうじて痰をよけた。その時ウエイトレスの綱を揺する動きに身体が同調して、上の階までもう少しのところまで身体が跳ね上がった。「これや」
「痰・命中させてみぃ・おっぱいのばけもん」
「なんやと・こらー」
「おかまー」
「かーっ・ぺっ」
「おまえケツの穴・がばがばやろ」
「かーっ・ぺっ」
「フェラチオ名人」
「かーっ・ぺっ」
「あんたのバイズリ・にっぽんいち」
「かーっ・ぺっ」
 完全に振り子になっていた。ウエイトレスは意地になって痰を吐き続けている。今だ!!!
 曾根崎キッドはずるムケの右手も添え深く沈んだ後、渾身の力を振り絞って跳ねた。掌の痛さは感じなかった。

 さゆりは心がざわめくのを感じた。何かが起こるのがわかった。下のさゆりが呼んでいる・と思った。呼んでいると思ったが、行かない方がいいのでは・という気がした。空間は真っ赤に染まり、しかしここにはいることができなくなるだろう。躊躇があった。(つづく)

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2018年04月04日

曽根崎キッドの日々 62

 曾根崎キッドは階段をのぼった。5階分のぼれば屋上のはずだ。ドアがあった。静かに開けてみる。エレヴェーター・ホールの横だった。ウエイトレスを探した。トレイにシャンパンとグラスを乗せ、おっぱいとケツを強調させながら向こうへと歩いていた。曾根崎キッドは素早かった。ちょうどさゆりのいる部屋の窓側にあたる一角になぜか綱がとぐろを巻いてそこにあった。身体を前傾し、走り出す。ウエイトレスはちょうどテーブルに到着し、何か客と談笑していた。綱は一端が空調の室外機を覆うジュラルミン製の外枠に固定されていた。長さを目で測って、五階分の長さ・と思えるあたりを鷲掴みし、そのままフェンスを超え、重力に身を任せた。客の「ああっ」という声に
ウエイトレスが振り向いた。曾根崎キッドは目を見開き、落ちながらも、掌に確実にやってくる衝撃に備えて、綱を二の腕にそして腰へと巻き付けた。そしてその衝撃はやってきた。右の掌の皮がずるっと剥け、左の掌とぐるっと綱の巻かれた二の腕でかろうじて身体を支えられた。その衝撃の直前に二人の女の姿を見た気がした。見覚えのある顔だった。

 曾根崎キッドは一つ下の階まで落ちてしまっていた。
「こるぁぁぁ、キッドなにしとんじゃ・ボケぇ」
 上から声が聞こえた。ウエイトレスのでかい顔が見下ろしていた。曾根崎キッドはそれどころではなく、片手と両足で少しずつ上へとよじのぼろうとした。その時、綱が揺れだした。ウエイトレスが上で揺すりだしたのだ。
「ヤメろ・あほ」
「なぁにがアホじゃ。アホはお前やろ・ボケぇ」
「ヤメろよ・ヤメてくれ」
「ヤメへんのじゃ・ボケぇ」
「ヤメてください・お願いします」
「ヤメへん言うてるやろ・ボケぇ」
「落ちるやろ・ヤメろよー」
「落ちたらええやんけー・いたいぞー」
「死ぬやろ・アホ」
「アホはお前じゃ・ボケぇ」
 曾根崎キッドは揺れながら、左手の握力がなくなりつつあるのを感じていた。(つづく)

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2018年04月03日

曽根崎キッドの日々 61

 空間の赤い色が濃くなってきたのと同時にさゆりは少し息苦しさを覚えだしていた。何かが起こっているのはもう間違いなく、そしてそれは下のさゆりに何か予想外の動揺をきたす出来事のはずだった。息苦しさとともに動悸も感じていた。少しさゆりは動揺したかもしれない。

 曾根崎キッドは、じれていた。今すぐにでもこのドアを蹴破って中に入り、暴れてさゆりを救い出したかった。さつきは新世界キッドを迎えに下まで降りていった。彼らを待っている時間が無限の長さに感じられた。今こうしている間にもさゆりはまた新たな陵辱を加えられているかもしれなかった。曾根崎キッドは大きく息を吸ってみた。しかし、この玄関前でただ指を銜えて待っている事は非常に自分が能無し・に思えてくる。自分の愛するオンナが中でむちゃくちゃされているというのに一体お前はなんなのだ。トドムンドの社長ならこんな時どうするだろうか? 時間を遡ってさつきとの婚約中にさつきがこんな目に遇っていたらあのおっさんはどうするだろうか? 玄関から「こんにちは〜」と行くのだろうか? そんなはずはない。モニターに映る自分の面は割れている。さゆりはどこにいるのだろうか? あのただっぴろいリビングか? それとも・・・・。

 曾根崎キッドは自分が連れて行かれたときの部屋を思い出していた。そこから見る眺めは群を抜いていて、飛田でさえも夢の街のように見えた。夢の街ではあるよな・確かに・・・・・・・・・・・。そうだ!!!
 そうだ・ベランダだ。ベランダがあるはずだ。ベランダまでなんとか侵入できれば、窓を割って中に入れるかもしれない。

 そう思うと曾根崎キッドは、廊下をつきあたりまで走り、窓から身体を乗り出してみた。そして絶望した。そのマンションはでっぱりというものが皆無だった。少なくともそちらの面にはなかった。となると・・・残る可能性は屋上か。何か道具か方法かが見つかるかもしれない。ただ問題はあのウエイトレスだ。いるかなあ・いるだろうなあ。エレヴェーターから堂々とはやっぱりマズいだろう。よし、階段で上ってみよう。

 さゆりは身体の震えをオンナに気づかれないように懸命に堪えていた。しかし、声を上げながらもうどうでもよくなってしまう予感がしていた。(つづく)

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2018年04月01日

曽根崎キッドの日々 60

    男は全裸のままでソファーにだらしなくふんぞり返っていたが、夏木マリを見て「お」と声を出した。自分にはそんな趣味はなかったのだが、見るのなら大好きだ。
「ほんとはサトルがもう一回ぐらいイケたらもっとおもしろいんだけど」
 どうだろう・と男は思ったが事の成り行き次第では・・と少し気が乗った。
 夏木マリはワインをなみなみとグラスに注ぎ、1/3ほどを一気に飲んだ。そして今度は1/3を注射器で吸い上げた。
「この子にもごちそうしてあげるのよ」
 夏木マリはワインクーラーの氷の浮いた水で注射器を一杯にし、さゆりの後ろへと回った。
「いい子だから、少しお尻を上げてごらんなさい」
 さゆりは言われるままに動いた。内股が汗ばんでいた。オンナの指がやさしくやさしくさゆりの肛門をほぐす。そのうちにチカラが抜け、オンナの指がするっと中へ入ってきた。一瞬さゆりの身体に痛みとは異なる電流のようなものが走ったが、オンナは指を中で動かさずさゆりの括約筋を楽しんでいた。そのうちさゆりのチカラが抜けるタイミングに合わせ、オンナの指は深く侵入し、さゆりは未だ心を閉ざしたままであったが、意外な箇所を責められ少し動揺したかもしれなかった。オンナの爪が粘膜を軽く刺激していた。

 空間の赤みが濃くなってきた・と思った。確実に何かが起こっていた。心が騒いだが、冷静になろうと努めた。

 曾根崎キッドはさつきに案内され「D」という番号が刻まれた部屋のドアの前にいた。(つづく)

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2018年03月31日

曽根崎キッドの日々 59

 もうさゆりが連れて行かれてかなりの時間が経ったはずだ。今頃宅配されたピザを囲んでカンパリでも飲んでいるかもしれない。さゆりはそんなとき服を着ることを許されるのだろうか。ローブぐらいは掛けてもらえるのだろうか。曾根崎キッドは狂いそうになり、さゆりを愛してしまっていることに気づくのだった。

 上のさゆりはこめかみ辺りがピクピクするのを感じた。明らかに何かが違う。下のさゆりに変化がある・と直感した。情況が変わると確信したさゆりはその変化に備えた。

「この子意志が強いわね」夏木マリが言った。男は二度射精してしまっていた。二度目の精液はさゆりの左の瞼を塞いでいた。
「お前も飲む?」男は白ワインをソムリエナイフで乱暴に開けながら夏木マリにすすめた。
「入れてちょうだい」
 さゆりは角度のついたあん馬のようなものを抱えさせられていた。肌には赤い筋が何本もつけられいくつかからは微かに血がにじんでいた。夏木マリはワインを口に含むとさゆりの背中と尻に霧を吹きかけた。「ひっ」とさゆりから声が漏れた。
「痛いときや感じるときは声を出すのよ」夏木マリは低い声でさゆりに言った。さゆりは目を瞑ったままその声を聞いた。夏木マリは何かを思いついた。隣の部屋へと消えた。
 男は立ち上がり、さゆりの顔にこびりついた自分の精液を満足気に眺め、そして指で集めさゆりの鼻をつまみ口を開けさせ、その中に押し込んだ。そしてワインを口に含むとさゆりの顎を指で押し上げ、こちらを向かせ、やさしくキスをし、口に含んだワインをさゆりに注いだ。さゆりはすべて飲み干した。そして塞がれていた左目を開いた。

 上のさゆりはぶるっと震え、そして辺りを見回したが空間の裂け目はなかった。しかし周りが幾分赤みがかっている・という気がした。

 夏木マリが注射器のようなものを持って現れた。(つづく)

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2018年03月30日

曽根崎キッドの日々 58

 ピザ・ハットの宅配のにーちゃんがやってきた。インターフォンでその旨を告げ玄関ロックが解除された。曾根崎キッドも中に入った。ピサ・ハットのにーちゃんはなにかあからさまに不審な者を見る目で曾根崎キッドを見たが、曾根崎キッドはスマイルで返した。それ以降ピザ・ハットは目を合わさなかった。ピサ・ハットは34階を押したので、曾根崎キッドは怪しまれないように42階を押した。ピザ・ハットが34階で降りるとすぐに曾根崎キッドは35を押した。エレヴェーターを降りるとすぐに曾根崎キッドは非常階段を探した。通路の端にあるものだ・と思っていたから通路を最後まで走ってみた。しかしなぜか非常階段のドアは見つからなかった。エレヴェーターのところまで戻ると37階で下に降りてきつつあった。ボタンを押しそうになったが、34階ではピザ・ハットが乗ってくるに違いなかった。だから残念ながらやり過ごすことにした。

 そのときエレヴェーター前の玄関ドアが開いた。曾根崎キッドは身構えた。こんなところで何をしているのか・という質問に対する答えを瞬時に5つほど考えた。ドアから出てきたのは吉沢さつきだった。
「うわあ、びっくりしたー」
「びっくりしないの。それよりさゆりちゃんは34のDよ。この階段使えるわ」
 さつきはドアをさらに開けた。そこには上下へと続く階段が見えた。そのドアは他の住居用のドアとまるでおなじで全く区別がつかないデザインだった。
「ピザの子と一緒に入れたでしょ。あのピザあたしが注文したのよ。間違いなくさゆりちゃんはあの部屋にいるわ。安本がどうしても部屋番を吐かなかったのよ。変なとこプロのプライドあるんだから」
「で、どうやった? 中の様子わかった?」(つづく)

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2018年03月29日

曽根崎キッドの日々 57

「うわー、すんごいことになっとんなあ、きみ」
「おい・やめろ、はなせ、うわー」
「キッド、ごくろう。こっちはおれに任してくれて、はよ行ったり。もうさつきちゃんらは入った頃や」
「わかった」
「こるぁ、はなさんかい。おまえこんなことしてただで済むと思とんかい」
「ん? なんか言葉遣いがなっとらんなー、このにーちゃん。自分の置かれてる立場に対する認識がやや、主観的やな」ウタマロちゃんは糸を斜め上にくいっと引き上げた。
「ぎゃぁぁあぁー」
「右に行く・と思わせといて、左なんつって」
「ぎょえぇぇぉぅ」
「ちょっと緩めて・ピンと張る」
「ぎぃゃぁあぁ・ぁ・あ」
「緊張に・・・緩和。キンチョー・・・の夏。あっか上っげないで・・しっろ上っげない」
 安本弟は失禁し気絶してしまった。小便の色は赤かった。

 さゆりはさゆりを探し続けていた。しかしここから出る方法はまだわからない。ふと考えた。下のさゆりは敢えて意識を遠ざけているのではないか・と。今頃身体の自由を奪われ、金持ちたちのおもちゃとなっていたぶられているはずだ。感じてしまっては負けだ・とおもったじゃないか。感情を持たないようにしよう・と思ったじゃないか。曾根崎キッドがきっと来てくれることだけを思おう・と決めたじゃないか。そうだ、そうだった。自分が決めたことだったのだ。ということは、下のさゆりが意識を戻さない限り再び合体することはないのだ。
 諦観にも似た気持ちが支配的になったさゆりは、チカラを抜いた。「待つしかないわ」と思った。

 曾根崎キッドはマンションの入り口に立っていた。誰か住人がロックを解除して入るのを待っていた。(つづく)

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2018年03月28日

曽根崎キッドの日々 56

 そのピアスは見てるだけでこちらが股間押さえて内股になるような類いの貫き方でなんと亀頭の「首」部分から貫かれ、尿道から「こんにちは」してて、亀頭の首部分と繋がっていた。
「す・すごいね」
「やろ?」
「でも・・痛そうやな」
「泣いた・で」
「やろな」
「そんなもん・おまえ・ふつーの痛さちゃうで」
「やろな」
「おまえもやれよ」
「なんのために」
「おんな・ひーひーやで」
「うそ」
「ここんとこがGスポ直撃よ・わかる?」
「うん、それはなんとなくな」
ひゅっと音がして、何かが曾根崎キッドの耳元をかすめた。
「ぎょぇぁおぉぉぅ」
叫び声は安本弟だった。そのピアスが釣り針のようなもので吊り上げられていた。反射的に立ち上がったが安本弟のペニスは斜め上へと引っ張り上げられ安本弟はつま先立ちになっていた。
釣り糸を慎重にたぐりながら曾根崎キッドの背後からウタマロちゃんが現れた。(つづく)

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2018年03月27日

曽根崎キッドの日々 55

「やっぱりちんちんに真珠とか入れてんの?」
「なんやと」
「いや真珠とか入れてんのんちゃうん?」
「あにきは入れてるけど、おれはそんなんちゃうねん」
「え・なになに?」
「そんなん言えんわ」
「なんでぇ? 教えてぇやー。なんなんなんなん?」
「知りたい?」
「ごっつい知りたい」
「驚くなよ」
「驚かへん・・、いや驚く」
「びっくりすんで」
「びっくりしよー」
「ええか・・・ちょっと待っとれよ」
 安本弟は立ち上がりズボンのベルトを緩めた。膝までおろすと、絹のトランクスを穿いていた。
「あ・それ通販のパンツやろ」と曾根崎キッドは言いそうになったが堪えた。
「ええか・いくで」
 安本弟は前を開いてペニスを出した。
「うわ」
「どや・すごいやろ」
「なんじゃこりゃー」
「最近はこれやで」
「うひゃーーあ!!」
 安本弟のペニスにはピアスが付けられていた。(つづく)
 

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2018年03月26日

曽根崎キッドの日々 54

 さゆりは朦朧としていた。魂が抜けてしまったような感じだった。安本に起こされた時からそうだった。怖さはまるでなかった。すべての指示と命令を受け入れた。それは別段嫌なことではなかった。息を吸うような感じだったのだ。そのオトコとオンナはさゆりにいろんなポーズをとらせ、さゆりのあちこちにいろんなものを挿入し、そこからいろんな液体が分泌し、さゆりの身体にいろんな液体をかけた。それはくしゃみやしゃっくりのような感覚でさゆりの神経に届いたが、特に不快感はなかった。オトコとオンナは次々にいろんな器具を出してきてはさゆりの身体で試した。三カ所を同時に塞がれた時は一瞬咳のような感覚に陥って苦しくなったがそれさえも次に同じことをされた時にはもう慣れてしまっていた。自分の身体ではあったが遠い世界の出来事のようだった。

 さゆりはあらゆる方向を試してみた。が、しかし、その空間からの出口は見つからない。

 曾根崎キッドは安本弟と向き合っていた。典型的なヤクザで良心の欠片もないタイプだった。
「後5時間ほどで帰ってきよる。殺したりせえへんで。たいせつな商品やからな。それよりもあんたに礼しなあかんこともあったなあ、そう言えば」
「さゆりちゃんを返せ」
「なんでまた?」
「なんでまた? て決まってるやないか。お前らがやってることは誘拐やぞ」
「まあ正確に言うなら・誘拐・拉致・強制労働・売春強要やけど」
「そんなもん、余計悪いやろ。犯罪やぞ」
「犯罪には慣れっこで〜す」
「前科付くぞ」
「もうふた〜つついてま〜す」
「はげ」
「なんやと」
「はげ」
「もういっかい言うてみい」
「ハ・ゲ」
「こるるるるぉすぞ、ボケぇ」
「兄弟揃ってハゲか。おまえのほうがいさぎええで」
「うるさいのう」
「おとうちゃんもハゲなん?」
「しらんし」
「なんでやねん?」
「ハゲる前に死んだし」
「わかった。おかあちゃん方のおじいちゃんハゲやろ」
「うるさいのう。おかあちゃんもはよ死んだんじゃ」
「お前ら兄弟、なかなかかわいそうやなあ。そんでやくざなったん?」
「放っといてくれ」
 曾根崎キッドは新世界キッドとさつきにできるだけ安本弟と時間稼ぎをするよう言われていた。(つづく)
 

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2018年03月25日

曽根崎キッドの日々 53

 あるとき上のさゆりがきょろきょろしていたら下のさゆりがいなくなった。いなくなったというより、上のさゆりのまわりには何もなかった。真っ白の画用紙で出来た箱の中に閉じ込められたような気がしていろんな方向に進んでみるが進んでも進んでも何も変わらなかった。下のさゆりはどこへ行ってしまったのか? 上のさゆりは考えたけども何もわからず、ではひょっとして上のさゆりが何かに囚われてしまったのではないか・と思うようになった。考えていくうちに上のさゆりは下のさゆりが目覚めてしまったのではないか・という考えに行き着いた。もしそうなら、下のさゆりは起こされ、安本たちによって、あのマンションへと連れて行かれたということだ。上のさゆりは少しアセり、もっといろんな方向へと進んでみたがやっぱり、何も起こらなかった。

 曾根崎キッドはなんだか新世界に来てからもやもやしたものがやっとスッとした。ゆうの足がしなやかでいかにも強靭そうだったことがなんとなく引っ掛かっていたのだ。
「ゆうの両おやが事故で急に死んでもうて、わしが預かることになったんやが、これがわしと合わんねん。何度も家出はするが帰ってきよったんやけどなあ、最後の家出は一ヶ月にもなって、こらもうなんかあった思て、わしも本気で探したら、あんな世界に入ってもうとった。よりによってそっち行くとはなあ」
 曾根崎キッドは、ゆうがさゆりを仕込んだと聞いた。ゆうは、いやゆうすけは「タチ」か・と思った。まあ・自然だ、さゆりとの関係なら。
「もう二年ほど、こんな近いとこにおっても会うてないなぁ」
ゆうが頑にミファソ行きを拒んだ理由だ。
「あっこの社長もややこしいオトコオンナやしな。そやけども、その、さゆりちゃんかいな、その娘をなんとかしやんなあかんいうことやな。」
 新世界キッドになって電話を取った。(つづく)

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2018年03月24日

曽根崎キッドの日々 52

 曾根崎キッドはトドムンドの社長に連絡しようと思ったが、意識の上で新世界と曾根崎は遠かった。さらにあのおっさんはヒマなときならいいが、ちょっと自分が忙しかったら、露骨に嫌なカオをする。この仕事も自分が頼んだにもかかわらず、頼んだということは、自分がこの一週間忙しかったということだから、そっちはやっぱりやめとこうと思った。
 と、なると頼りになるのは「ミファソ」の面々しかないな。すぐに向かった。
 ミファソに着くと、さつきがいた。顔を見るなり、「また、やったみたいね」と言われた。
「そうかもしらんけど、まあ、それはそうなんやろうけど、それどころじゃないねん」
「どうしたの?」
「新世界キッドの助けがいる。あとさつきちゃんも」
 曾根崎キッドの真剣さにさつきは茶化すのはやめて「おじいさん呼んできます」と奥へ行った。
 新世界キッドとさつきにこれまでのことを話した。

「安本らのアジトは何カ所かあってな。そのさゆりちゃんがどこにおんのかはわからんが、手分けして探そう。ほんでゆうすけはどうや、まだ寝てんのかいな」
「ゆうすけ・・・て・・・・ひょっとしてゆうちゃんですか」
「もう隠しとかんでもええやろ。そうや、あれなあ、お恥ずかしいことにな、わしの孫息子なんや」(つづく)

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2018年03月23日

曽根崎キッドの日々 51

 さゆりは頭を揉んでもらって、髪の毛を編んでもらって、そしていまオイルで背中の筋を伸ばしてもらっていた。指が太ももの裏側へと移動した。さゆりはそこ弱かったのだが、今は大丈夫だった。筋が伸びると背丈までも伸びる気がした。「最近そういえばあまり寝る前のストレッチやってなかったわ」と思い、裏側の筋をもっと伸ばして欲しいと思った。すると、指にチカラが入るのがわかった。海岸は夕暮れを迎えつつあった。さゆりは首を傾けて海を見た。海はどこまでも続いていてそのさらに向こうに太陽があった。真っ赤で大きくほんとに燃えてる・とさゆりは思った。沈む太陽がいとおしく思えてきた。「キッドの次に好き」と呟いた。夜になったらサテとロブスターでビールやカクテルを飲もうと思った。ロブスターはローストしてもらおうと思った。もちろん、曾根崎キッドと。風通しのいいあのお店に曾根崎キッドと腕を組んで行って、ビールで乾杯をして、少し早く酔っぱらってしまいたいと思う。そしてその後あのいつものタクシーを呼んで山の中の街へ行きたい。山の中にはサルたちがたくさんいる。サルたちに囲まれ、祝福されながらあの人とセックスをしたい。さゆりはその時気づいたのだが、マッサージをしてもらってるさゆりを上から見ていた。あ・と思ったら、下のさゆりに吸収されてしまった。なんなんだろうと思ったが身体がすごく軽いことに気がついた。何度かやってみると、思い通り行ったり来たりできるようになった。下のさゆりと一緒のときはマッサージの気持ちよさを感じるが上にのぼってるときはなあんにも感じなかった。(つづく)
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2018年03月22日

曽根崎キッドの日々 50

さゆりはどこまでも続くまっすぐの道で途方に暮れた。クルマを見てみると、自分のテイストとはまったく違ったアメ車のオープンだった。「趣味ワルぅ」と思ったとき、今まで自分がそれに乗っていた・と気づき、穴でも掘りたい気持ちになった。

    微かに聞こえてきたエンジン音に振り返ると、遠くに車影が見えた。さゆりは少しほっ・とし、路の真ん中に出て被っていたカウボーイ・ハットを手に取り、クルマに向かって振った。クルマはどんどん近づいてくるが砂埃がひどく、さゆりは自分が見えているのか心配になった。さゆりはぴょんぴょん飛び跳ねて自分の存在をクルマにアピールした。クルマはどんどん近づいてきた。砂煙ももうもうと立ち上がり、それがトレーラーだということがやっとわかった。運転席に知った顔があった。

    笑っている気がしてさゆりはもっともっとぴょんぴょんするのだった。クルマがさゆりの5mほど前で停まったが巻き上がる砂煙がものすごく、それが収まるまでまで30秒ほどさゆりは待たなければならなかった。その時間は一年ほどにも思えたのだが、さゆりにはあまり苦にならなかった。ある確信があった。砂煙が収まるとさゆりは運転席の下までお尻を振りながら歩いていった。そして見上げると青い目の曾根崎キッドが笑いながらさゆりを見下ろしていた。

「ヘイ ベイビー ワラハプン」「ガラ フラッタイヤ」「ウェラユ ゴーイン」「ゴーインダウン トゥ メクスィコ」「オゥケィ カモナップ アィル ティキュウ デァ アィムゴナ ギヴュー ア ライド」「オゥ センキュー」

    さゆりは曾根崎キッドに引っ張り上げられトレーラーの座席へと座ろうとするときに我慢できなくなって曾根崎キッドの膝の上に乗っかり、激しいキスをした。曾根崎キッドはさゆりを抱えたままトレーラーを動かした。さゆりはくちびるを離し、曾根崎キッドの顔をよーく見てみたが、青い目の曾根崎キッドも素敵だった。だからもう一度激しいキスをした。さゆりは今死んでもいいと思った。キスをしながら背中でトレーラーのステアリングを少しずつずらした。そのとき頭の中で「スウィート ジーン ヴィンセント」が鳴り出した。トレーラーが傾き出したのがわかったがさゆりは気にしなかった。曾根崎キッドがブレーキをかけた様子もなかった。「やっぱりキッドはわたしのこと・わかってる」とさゆりは思い、舌を絡め、くちびるをもっと激しく吸った。トレーラーはどんどん傾いていった。

    
    さゆりはトップレスで海岸でうつ伏せになっていた。パラソルが陽を遮ってはいるが暑い。背中を滑る指が心地よく、ときどきため息が漏れる。(つづく)
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2018年03月21日

曽根崎キッドの日々 49

「まだ約束の時間まではだいぶあるから休んどき。寝ててもええで。起こしたるから」

 安本は部屋を出て行った。さゆりは眠りたいと思った。きっと曾根崎キッドの夢を見るだろう。その夢はあの風呂場での出来事の再現であってほしい。それも何度だってかまわない。夢は一瞬で何時間も何日も何年ものタイム・ワープができることをさゆりは経験上知っていた。すごい密度で夢を見たかった。一生分の時間がそこに凝縮されてもかまわない。その後は地獄の一日が待っているのだ。その地獄の中で感情を持ちたくなかった。感情を持ってしまえば、そこでは商品になるとさゆりは思った。それはさゆりにとって敗北だった。身体は感じるだろうし苦痛も覚えるだろうが、そこで精神的な反応だけは避けなければならなかった。何度もいかされるだろうし、オトコやオンナの体液が身体に入ってくるだろう。それでも粘膜の外とこちら側は別世界なのだ。

 さゆりはいつしかソファの上で寝息を立てていた。安本が一度だけ様子を見に来たが、腰から足の線をしばらく見て「ん・ええオンナや」と呟いて出て行った。さゆりはこんな夢を見ていた :

 さゆりは姫だった。平家の姫だったのだが、今は源氏との戦いの中、平家は敗北を続け、都を落ち、九州まで逃げる途中だった。さゆりには姉がいたのだが自害してしまっていた。姉はものすごく源氏を怖れていた。源氏の男どもを怖れていた。「あのような田舎者の手に落ちるくらいなら死んだ方がましです」という言葉を姉の口から何度聞いたことだろう。何度も何度も耳にタコができるほど聞かされ続けたさゆりは最後にその言葉を聞いた時もなんの緊迫感も覚えず聞き流していた。その日の夜に姉は死んだ。さゆりはあまりのショックに一時言葉を忘れた。ちょうどその時、源氏の軍が迫りつつあるという知らせが入り、姉のことを弔う間もなくさゆりたちは西へ逃げたのだった。「あのような田舎者・・」というのはどのような人間たちなのだろう・とさゆりは考え続けたが、目の前には何かおそろしげな鬼のお面をかぶった大男の像しか浮かんでこないのだった。さゆりは13歳であったが、この身が、なんの庇護もなくなった際には、とてつもなく恐ろしい出来事が起こるということはなんとなくわかっていた。夜に野営地で蚊帳を吊って寝ている時、ものの気配にふと目を覚ますと、蚊帳越しに知っている顔があった。「キッド!!!」さゆりは飛び起きて蚊帳をくぐり、キッドとキスをした。「さゆりちゃん、行くぞ」「行くってどこへ?」「まかしとけよ」その時矢が飛んできた。キッドの頬をかすめ蚊帳を貫いてさゆりが寝ていた布に刺さった。キッドの頬からは血が流れていたがその血と共に曾根崎キッドは溶けていった。「ああ〜ん、キッド〜」

    さゆりのクルマがパンクしてしまった。長く広い道を走っていたのだ。路肩に停め下りてみてみると左の後輪がぺちゃんこだった。「シット」という言葉が漏れた。(つづく)
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2018年03月20日

曽根崎キッドの日々 48

 「ついでにあんたのプロフィールも作りたいからな。コスチュームは・と、そやな、これとこれ・ついでにこっちもな」
 さゆりはこれが夢だろう・と最初は思った。ジェット・コースターに乗っているような・つい先ほどはあんな高みにいたのに今は自分が売りものになろうとしている。でもさゆりにとって何が一番のリアリティかといえば曾根崎キッドとの風呂でのセックス以外にあり得なかった。さゆりは自分の運命がわかっていたが、それに抗うのもみっともないし、受け入れようと思った。そして、必ずキッドが自分を助けにきてくれることを心の底で信じようと決めた。だから、安本の命令にも素直に従った。きわどいポーズ・どぎついポーズを要求されながら顔は、レンズが曾根崎キッドであると思って、それを悩殺する表情をした。
「なかなかあんた・ええコやな」づら安本が言う。デジカメを弟に渡したあと、安本が話し出した。
「まあ、だいたい想像はついとると思うけど、ちょっと説明しとくわ。あんたは今日の夕方5時から明日の昼12時まで買われることになっとる。客は川向こうのマンションのオトコとオンナや。オトコはノーマルなただのスケベやけど、オンナはSや。わしらの商売は、刃物で身体に傷付けへん限りナニしてもええいうことになっとる。時間がたっぷりあるよって、かなりあんたにとってつらいこともあるやろ。そやけどな、客には絶対逆らったらあかん。これだけは守れ。ええか、逆らったらあかん。でもな、悪いことばっかりちゃうで。最後まであんたがちゃんとやったら、あんたには9万やる。おこづかいや。仕事や思うてやってほしいんや」
「わかりました」
 さゆりはそう言うしかなかった。奇蹟を信じようと思った。「きっとあの人が・曾根崎キッドがあたしを助けてくれる」(つづく)
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2018年03月19日

曽根崎キッドの日々 47

 曾根崎キッドは家の中へ飛んで帰り、ゆうの部屋の襖をことわりもせずに開けた。ゆうは起き上がっていたが「なんなのよ」という表情でこちらを見た。
「ごめん。でもな、さゆりちゃんがどこにもいないねん。安本にさらわれたと思う」
 ゆうは依然として「なんなのよ」の顔のままで曾根崎キッドを睨んでいたが、「売られるかもしれない、さゆりは」と今度は「どうしてくれんのよ」という顔で呟いた。
「え、売られるってさゆりちゃんが・・・」
「あそこはそういう組織なのよ」
「どこに売られるわけ?」
「あそこの組織、結構今女のコに困ってるはずなのよ。さゆりならフレッシュだし、一気に売り上げをあげようとするかもしれない。となると、お金持ちのヘンタイね。一晩何十万か払うわね、やつらなら」

 ゆうは昨日部下Bが連れてきたコも、まず初日はあの高層マンションの住民が買ったことをキッドは知らないはずだ・と思ったから、それは伏せておこうと思った。社長にまず知らせて、自分はこんな身体だから、部下A・Bに託す以外になかった。間違っても新世界キッドに知られてはいけないし、チカラを借りるなんて自分としては許されない。しかし、ちょっと待てよ、目の前のこのオトコのあの変なパワーは使えるかもしれないと思いかけたが、いや・違う、こいつはきっと「ミファソ」へ行くだろう。それはマズい。

 曾根崎キッドは、ゆうが「フレッシュ」とさゆりもことを言ったことに対して「そーだ」と思う気持ちと「だからヤバいっちゅうねん」という相反する二つのベクトルに引き裂かれそうになりながらも、「お金持ちのヘンタイ」と聞いた時から頭の中はあのマンションのやつらに違いないと思っていた。あそこにいた四人でなくとも、その近い知人だろう・と見当はついていた。そしてゆうたちと安本が利害が対立するなら、ゆうたちの商売もまたきっと「オンナを売ること」だろう。しかし、トドムンドの社長はいったいここで自分に何をやらせたかったのだろう。

    そんなことが一瞬、曾根崎キッドは頭をよぎったが、しかし、今はあのさゆりがヘンタイたちに買われてしまうことを何としても阻止しなければいけなかった。「なにができる?」と曾根崎キッドの頭もまた回り始めていたのだ。

「おねえちゃん、ごめんな。あんたには個人的にはなんの恨みもないんやけどな。しばらくちょっとおもちゃになってもらわなあかんのよ。ええおもちゃかどうか調べさせていただこうか」(つづく)


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2018年03月18日

曽根崎キッドの日々 46

曾根崎キッドは少し混乱したが、それは曾根崎キッドがリベラルではないからではなく、その事実の組み合わせによるものだった。「ゆうとさゆり」というのがピンとこなかっただけで、しかしさゆりがそう言うのならそれは本当だろうし、だからといってすぐに「そう、じゃあ兄弟に乾杯っ」など言っちゃうほど曾根崎キッドはバカでもなかった。ゆうべの風呂場の情事の余韻をもっと楽しみたかった曾根崎キッドは今、さゆりとの間に他人を置きたくない・と思い、もう一度二階へさゆりを誘いたかった。もう一度楽しみたかった。

「ゆうちゃん、なんか欲しいものは?」
「なにもいらない。ありがとう」

    曾根崎キッドは、さゆりを探しに外へ出た。朝の川からの少し涼しい風に当たっているのかもしれなかった。大声を出すとゆうに気づかれるから、ホワイト・ノイズの声で「さゆりちゃん」と繰り返した。しかし、返事はなかった。

「お初のコやからねえ、三十でどうです?」
安本兄が携帯の電話口で言う。
「時間はオールナイトでよろしいよ。はい・ほんなら商談成立。5時に送っていきますわ」
「久しぶりの大口やな」安本弟が電話を切った安本兄に言う。
「一石二鳥や」

    曾根崎キッドはこの家の誰かのサンダルが片方落ちているのに気づいた。急いで家の中に戻った。ゆうの寝てる部屋の襖を乱暴に開けると、ゆうが眩しそうな顔で薄目を開けた。眉間に皺がよっていた。
「さゆりちゃんはここで寝たの?」
「なにを言ってるの。あんたとあらためて寝たんじゃないの」
「ちがうねん、上には来てないねん」
「地下、見てみた?」

    曾根崎キッドは返事もせずに地下へと向かい、「秘密の匂いがする」と思った部屋と風呂場を見てみた。誰もいなかった。曾根崎キッドはアタマが真っ白になった。「さゆりちゃん」身体の毛穴が閉まっていき、身体に寒気をおぼえた。
ゆうのところで寝ていない。自分のところに来ていない。約束したのだ、なのに、来ていない。
    
    さゆりの身に何かが起こったことは間違いなかった。あの片っぽうのサンダルが物語る出来事。さゆりは誰かに連れて行かれた・と曾根崎キッドは確信した。

    安本たち以外に考えられなかった。何のために?
    
    嫌な感覚が身体を駆け巡った。(つづく)
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2018年03月17日

曽根崎キッドの日々 45

「おい、落ちたか?」
「へい」

 曾根崎キッドは風呂から上がり、二階の部屋へと戻った。いずれさゆりが来るだろう。そのときのために右に寄って左を向いて寝ることにした。曾根崎キッドは疲れていたから、あっという間に眠りに落ち、さゆりと遊園地でジェット・コースターに乗ってる夢を見た。

「ほう、それがうまいこといったらええねえ」
 おかまの社長は部下Bに言った。 
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on the fifth day:
 曾根崎キッドは目が覚め、しばらくぼうっとし、それからさゆりの言ったことを思い出した。そして約束を思い出し、さゆりが空けていた左にいないことを知って少し落胆し、しかし、ゆうの状態もあることだし、そうは言っていたが、さゆりも疲れて、ゆうのそばにしばらくいたあげく、眠ってしまったのかもしれないと、思い直し、かえってその方がもう一度楽しめるような気がして、曾根崎キッドはある意味嬉しかった。しかし、昨夜さゆりと風呂で愛し合ったことはこれは曾根崎キッドにとってかなり歴代いい経験で、「さゆりちゃんはほんとにいいオンナかもしれない」と思い始めていた。ゆうが寝ているのなら、そばで寝ているに違いないさゆりを二階にあらためて誘ってみたいと思った。
 階下に降りていく。ゆうが寝ている部屋の襖をゆっくり開けると、ゆうがいた。さゆりはいなかった。ゆうは目を開けていた。布団の中で上を向いて目を開けていた。唇の腫れはまだ昨日のままだった。
「ゆう・・ちゃん」
「キッド?」
「どう?」
「だいじょうぶとは思うんだけど、ちょっとまだ身体は動かない」
「そう? しばらくは無理せん方がええな、きっと」
「ねえ、キッド」
「なに?」
「さゆりと寝たの?」
 曾根崎キッドはドキッとしたが、あのさゆりの喜びと自分の快感に嘘をついてもしゃあないと思った。
「うん、まあ成り行きやな」
「成り行き? そう、そうか。でもあいついいオンナだったでしょ」
 曾根崎キッドはゆうに自分の秘密をもつことが犯罪みたいな気がしてきた。こういうとき素直になるのが曾根崎キッドのかわいいとこでもあった。
「うん、かなり・・ね」
「ふーん、そう? あのねキッド、あいつを仕込んだのはあたしなのよ」(つづく)






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2018年03月16日

曽根崎キッドの日々 44

 曾根崎キッドは地下へと案内された。木造の外観や階上とは違い、地下はがっちりした造りだった。丸窓のある重そうなドアの部屋があった。何かが匂った。「秘密の匂いだ」と曾根崎キッドは思ったが、さゆりに促されるままに浴室へと案内された。
 さゆりが行ってしまってから、曾根崎キッドは湯船にどぶんとつかり、ため息をついた。湯船も浴室全体もかなり広く、それはラブホ並みだな・と曾根崎キッドは思ったのだが、やっと束の間いろんなものから解放された気分に浸ったのだった。お湯も曾根崎キッド好みのちょっとぬる目だったから、「ほえ〜」となってしまったら、ぷっと屁をこいてしまった。泡がぶくぶくとのぼってき、水面で破裂する。
「ヒトの内部と外部はまさに紙一重だな」と曾根崎キッドは思い、珍しく哲学的な気持ちになっていくのだった。それもこれも、ハードなこの一日の成せる業だった。曾根崎キッドはさらにリラックスしようと思い、タバコを取りにお湯からあがり、ドアを開けた。人の気配がしていつもの曾根崎キッドなら、警戒したかもしれないが、ゆる〜い精神状態にぬる〜いお湯・そして哲学の香り(実は勘違いで「へ」の香り)が不用意にドアを開けさせた。さゆりが立っていた。
「さゆり・・ちゃん」
 曾根崎キッドの不用意さは、さゆりの視線が曾根崎キッドの顔から下がっていき股間へ至る間も、股間を手でかくすとか・ドアを急いで閉めるとか・股で挟んで女のコになるとか、そのようなアタマがまったく働かないのだった。
「さゆりちゃん」
「も〜お、キッドぉ〜、ばか〜」
 さゆりが曾根崎キッドの股間にむしゃぶりついてきた。

 曾根崎キッドは湯船の中で放心状態だった。横にはさゆりが満足げに曾根崎キッドの胸に頭を乗せ、曾根崎キッドの乳首を爪で弄んでいた。突然獣のようになったさゆりにも驚いたが、その柔らかな身体と技術には曾根崎キッドも驚き・喜んだ。ちょっと喜びすぎて、今、アホみたいになって湯船の中で半覚醒の状態だった。いいオンナだと、さゆりのことを思った。その獣のような貪欲さも含めて。

「キッド、今晩一緒に寝ていい?」
「ゆうちゃんが寝てから?」
「うん」
「いいよ」
「先に上がってゆうさん見てくる」
「わかった。おれはもう少しつかっとくわ」
「キッド」
「なに?」
「寝ちゃだめよ」
「わかった」

 さゆりは上がっていった。曾根崎キッドは裸のさゆりの後ろ姿を見ることができたが、腰のくびれから突然の桃のような尻の盛り上がりとまっすぐ伸びた足にそそられた。曾根崎キッドひとりだけではなかった。
「おい、ええかげんにしなさい」
と、曾根崎キッドは股間に向かって言った。

 夜の風が火照った身体に気持ちよかった。さゆりはゆうの部屋に行く前に、ちょっと外へ出てみた。川を渡ってくる風が今日はさらっとしている・と思った。高めるだけ高められてからの放置による疼きはとても素敵なセックスで収まった。曾根崎キッドをほんとに愛しちゃったかも・とさゆりは思った。後ろで人の気配がして、耳元に息が吹きかけられた。さゆりはとても満たされていたし、それ以外に考えられなかったから、
「キッド?」と振り返った。その時みぞおちを不意に殴られ、息ができなくなり、意識が遠くなった。失われつつある意識は、キッドがさっき後ろから入ってきた時のことをリプレイしていた。(つづく)

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2018年03月15日

曽根崎キッドの日々 43

「ぼくにいい考えがあります」部下Bはまっすぐおかまの社長を見据えて言った。おかまの社長は、あれだけ痛い目にあわされてるにもかかわらず、またなんかしょうもないことを言うのではないか、と思った。今、わたしは怒りが炸裂しつつあるが、今こいつを使い物にならなくするのもメリットがない。パシリとか雑用とか・やらせることはなんぼでもあるのだ・と思い、期待もしないが、しかし、ヤル気をなくすのもいかがかな・と思い、「そう?」と拗ねたコドモが大好きな卵焼きを目の前にしたような、敢えてイエスともノーともとれる返事をした。

「きょうは疲れた」と曾根崎キッドは思った。なぜこんなに疲れているのか・想像はついていた。あの空白の時間。いったいおれはまた何をしでかしたのか? きっとTVをつければそれは判明するだろうが、ごめんだ・と思った。一晩寝て明日になれば事は落ち着き始めているだろう。ヒトの噂は7.5分だったじゃないか・そうだそうだ、と自分に言い聞かせていた。ゆうのことが心配ではあったが、さゆりがついていることだし、自分が出来る事もあまりなく、風呂にでもはいって寝よう・と思った。スパ・ワールドは・と思ったが、いかんいかん、今あんなとこ行ったりしたらアホだ。では、この家の風呂に入れさせてもらおう。でも・あるのかな。

「さゆりちゃん、お風呂に入りたいんだけど・・・・」
「そうですか。わかりました、準備します」
 さゆりは、いつものさゆりに戻っている・と曾根崎キッドは思った。しかし、顔を伏せたとき、さゆりの目が妖しく光ったことはもちろん曾根崎キッドは知る由もない。
「10分ほど待ってください。お呼びします」
曾根崎キッドは二階の部屋へと戻り、窓を開けた。川の向こうに高層マンションが見え、思わず最上階を見上げてみた。あいつらはまだあそこにいて画面をスクロールしているのだろうか?それとももうお開きになって、自分たちの部屋へと戻ったろうか?川面がその灯りできらきら揺れていた。その時「お風呂どうぞ」とさゆりの声が階下から聞こえた。(つづく)

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2018年03月14日

曽根崎キッドの日々 42

     部下Aと部下Bが帰って、さゆりはなんだか気が抜けてしまった。たぶん「しんせかいこんにちは」では他にビッグ・ニュースがなけりゃあの映像がヘヴィ・ローテーションのはずだし、でも、あの絵は見たくなかったし、曾根崎キッドにも見て欲しくなかった。
さゆりは「あ」と思い出し、曾根崎キッドには悟られないように地下室へ行った。重たいドアを開けると、あの女のコはもういなかった。ただ洗濯棒・バイブ付きが転がっていて、さゆりは「いや〜ん」と声を上げた。

「今回もだいぶイっとるなー。衝撃的」
「カズさんもえらいもん送り込んできよったなぁ」
「あの人が好きそうな人材ではあるわね、たしかに。それよりゆうちゃんが心配」
「安本のやつらなあ」
「そやけど昼間の話やったら、あれ、今日泊まりよる言うとったしな。今日はもう心配いらんわ」
「うたまろさん、店だいじょうぶなの?」
「今日はヒマと見た。バイトのコたちだけでイケるやろ。それより、今夜またなんか起きそうやな」
「あたしもそんな気がするのよ。ゆうちゃんがあんな目に遭うなんて、安本たちちょっと本気だと思う、今回は」
「そうなったら、あっちの社長もだまってないで」
「正面衝突はあかんな。そやけどあのにいちゃん、読めんからなあ」


「あのハゲとズラぁ、ナメた真似しくさってぇ」
部下Aと部下Bは事務所に戻った時、おかまの社長がそんなことを言うだろう、と予想していた。ところが、
「あんたら、ごくろうやったな。ゆうはどうなん?」と、きた。
「唇がだいぶ腫れとったみたいですけど、大事ではないみたいです」と部下Aが答えた。
「そう、よかったぁ」
意外な言葉に部下Aは「カックン」となったが、部下Bは表情を変えなかった。
「あんた、なんやのん」
「い・いえ、なんもないです」と部下Aは取り繕った。
「しかし、そのう、こんな、やられっぱなしではいかんのでは」
部下Bは部下Aがそういうのを表情を変えずに聴いていた。
「あたりまえやないの」社長の表情が変わった。
「やっぱり!!!」と部下Bは思った。
「あたりまえやないの。あんたら、そやけどなんかええ考えあんの? ただやられたからおんなじようにやり返すでは意味ないんやで。どうせやるんやったら、あいつら二度と立ち直られへんぐらいのダメージ与えたらな。わたしが怒ってないみたいに見えたとしたら、大間違いや。はらわた煮えくり返ってるんやでぇ。売られた喧嘩は買わなあかんけどやな、勝つ喧嘩しか意味はないんや。ほんま・はらわた煮えくり返っとんねんけど。わたしのかわいいゆうをやなぁ、あのきれいな顔をぼこぼこにしよってんで、あいつら。わたしが怒ってないわけないやん。ほんま・はらわた煮えくり返っとんねんでぇ。あんの、ハゲとハゲぇ、ナメた真似しくさってえ!!!」
「あ・ハゲとハゲね。なるほど」と部下Bは思った。
「あの・社長、ぼくにいい考えがあります」
おかまの社長と部下Aは驚いて部下Bを見た。(つづく)

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2018年03月13日

曽根崎キッドの日々 41

    部下Bがクルマでやって来た。
「はい、5分20秒ジャスト」
    
    部下A・Bが前に乗り、ゆうを挟んでさゆりと曾根崎キッドが後部座席に乗った。三人がゆっくりと座れた。山王方面へと向かい、すぐに飛田の入り口の門のところまで来た。さゆりが、ゆうの背中から手を回して曾根崎キッドの首筋を触っていた。曾根崎キッドはその意味はわかったが理由がわからなかった。

    家に着くと、部下Aと曾根崎キッドはゆうを抱きかかえ、さゆりは先回りして一階の部屋に布団を敷いた。鼻血以外に外傷はなかったが、唇が青く腫れ上がっているのがさゆりには痛々しかった。

    部下Bは地下室へと急いだ。なんとか部下Aにバレずに、シーメールの女を事務所に戻さなければならない。部屋には、女がソファで横になり寝息を立てていた。床には洗濯棒が転がっていて、なんと、その先端にバイブがガムテープでくっつけられていた。「なんのために?」と思ったが、今はそれどころではない。女を抱っこしてエレヴェーターではなく階段を上ると裏口に出る。そこにクルマをバックで停めておいた。トランクを開けると、おんなをその中に抱えて押し込んだ。そして何喰わぬ顔で玄関から家の中へと入り、ビデオの部屋を調べに行ったが、ビデオを収録していた形跡はなかった。部下Bは胸をなでおろし、だが何喰わぬ顔で運転席へと座って部下Aが出てくるのを待った。

「あのコは、女やんな?」
「間違いないでしょ。あのイキ方だもん」
「どうしたらええかな? あのコと遊ぶの」
「ルートはないわね。それ系のコじゃないでしょ」
「金積んでもあかんかな? 」
「そっちは女のコは売らないでしょ。そうね。でも・・安本なら金さえつめばなんとかするかもね」
「だいぶ、イライラしてるみたいやしな」
「そうそう。安本ルートから調達できるかもね。オーダーしてみようか」
「けっこう乗り気やな。ひょっとして? 」
「ああいう、ケナゲなコ、そそるのよ」(つづく)

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2018年03月12日

曽根崎キッドの日々 40

「お・おーっとぅ、曾根崎キッド・・・・ごきげんいかが?」と部下A。
「ごきげん悪いで。会うのは二回目・・・かな。多分」と曾根崎キッド。
「・・36、37、38。5分38秒きっかり」と部下B。
「クルマ回して、急いで」とさゆり。
「だいじょうぶ、歩けるから」とゆう。
「いや、ミファソがいやなら、クルマやな」と曾根崎キッド。
「ミファソはあかんわー」と部下A。
「ミファソ・・そうねえ」とさゆり。
「クルマお前回して来いよ」と部下A。
「社長のベンツなら今日空いてるはずですが」と部下B。
「頼むわ」と部下A。
「これからなら5分12秒から5分28秒のレンジでここまで回せます」と部下B。
「はよいってこい」と部下A。
「あの人、あんな人でした?」とさゆり。
「やっぱ、そう思う? なんか変やねん、さっきから」と部下A。
「こんだけメンツが揃ったんなら、おれはもうええかな」と曾根崎キッド。
「え・そんなこと言わないで」とさゆり。
「こわいから一緒に帰って」とさゆり。
「おれらも事務所戻らなあかんから、そうしたってよ」と部下A。
「わかった」と曾根崎キッド。
その頃、川の上での曾根崎キッドが「しんせかいこんにちは」のトップ・ニュースとなっていた。

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2018年03月11日

曽根崎キッドの日々 39

    部下Bは、さゆりからビデオを回していることを告げられ萎えていた。ものすごくプライヴェートに楽しみたかったのに、「演技」をしなくちゃいけなくなったのだ。解放感は急激にしぼみ、一気に楽しくなくなった。シーメールの女は無理な体勢の中、肩で息をしていたから、縛めを解いてソファの上に座らせた。ビデオが回っている以上、何かしないと、また社長に何をされるかわからない。しかし部下Bは萎え切っていた。女を自分の股の間に跪かせて、しゃぶらせてみたが、みょうにいろんなことを考えてしまって勃起しないのだ。部下Bは生まれて初めてそんな経験をした。ほんのすこしだけ偏差値が上がったかもしれなかった。そのとき、携帯が鳴った。部下Aからだった。

「  ゆうちゃんが安本らにやられた。おまえどこにおる?」部下Bは答えに困った。このことは部下Aにも内緒にしてあった。とっさに口が勝手に喋った。

「おれ、いま、火星です」
部下Aは部下Bのアホさは短いつきあいながら充分にわかってはいたが、これには「ん?」だった。
「はぁ?なんて?」
「いや、その、水・金・地・火・木の火星です」
「はぁ?それどこの店や?」
「いや、その、ずっと上の方・・・」
「上って北いう意味か?」
「いや、あのぅ、火星、かせぃ、か・仮性包茎です、ぼくもあなたも」
「ちょーまてよ、なに言うとんねん。なんでおれが関係あんねん、ほっとけや、仮におれがそーでもやで」
「やっぱ、そーすか」
「ち・ちがうって」
「ほんまですかぁ?」

    こいつ、どないしてん?今まで、「へい」とか「はぁ?」とか、言われたことに反応するだけやったのに。なんや、会話しとる。しかも会話の主導権握っとる。なんでや・急に・と部下Aは不思議に思った。部下Bの偏差値は本当に上がっていたようだ。

「その件はまたいずれ、社員旅行のときにでも。それより、ゆうちゃんや。だるま本店の路地や、すぐ来いよ」
「ぼくの走力なら5分38秒で行けると思います。では現地で」

「なんでや?」部下Aは電話を切ってから「どうも解せん」と思ったが、自分も現場へと向かった。向かいながらも「走力て?5分38秒?」とぶつぶつ言いながら首を傾げた。「水金地火木てぇ・・・・・・・・・・・・?」

    そこには足を投げ出して座り込んだゆうと、数日前に部下A・Bが拉致したあの男が傍に立っていた。(つづく)


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2018年03月10日

曽根崎キッドの日々 38


    曾根崎キッドが、そこ、であると思った「だるま」から入った路地に、ゆうは倒れていた。鼻から血を流し、口のまわりは青く腫れていた。
「ゆうちゃん・ゆうちゃん」
「キッド・・・・」
「だいじょうぶ?」
「見てわかんない?」
「とにかく手当しないとあかんな」
飛田のあの家まではけっこう距離があるが「ミファソ」なら近い。
「近くに知ってるとこあるから、そこへ行こう」
「ひょっとして、それ、ミファソ?」
「そうやけど」
「そこはだめ。帰る」
「そんなこというても、今のおれはきみをおぶってあそこまで帰れないわ」
「さゆりを呼んで」
「いや、それもいいけど、ミファソで手当しようよ」
「ぜったいいや」
「なんでなん?」
「いやなの」
「ええやん」
「いやっていったらいやなの」
「なんでなん?」
「ノーリーズン」
    押し問答の中、ゆうがやっと自分を出し始めて、曾根崎キッドはなんだか嬉しいような気持ちを感じていた。
「わかった。じゃあ電話するから番号教えてよ」
    ゆうは黙って携帯を取り出した。曾根崎キッドの手に渡った時、すでに呼び出し音がなっていた。しかしなかなかさゆりは出なかった。しかし、ゆうがミファソを拒絶する以上かけつづけるしかなかった。なんで出ないのだ・と曾根崎キッドは少しイライラいたが、それが自分のせいだとは夢にも思っていないのだった。4度目のコールでやっとさゆりが出た。
「あぁ〜ん、キッドね」
    さゆりは洗濯棒に曾根崎キッドを感じた余韻からはまだ醒めていなかった。
「もしもし、さゆりちゃん、ゆうちゃんが・・・・・」
「ゆうさんはもういいの。それよりキッドぉぅ〜」
「どうした、さゆりちゃん、よくないねん、ゆうちゃんがたいへんやねん」
「ゆうさんがどうしたのよ〜。あたしの方がたいへんだったのよ〜。もうばか〜、キッド〜」
    あんな清楚を絵に描いたようなさゆりが、なんでこんなんなんだろう、と曾根崎キッドは思ったが、ん?待てよ、自分はさっきあの高層マンションに連れて行かれたはずなのに、なぜここにいるんだろう・わからないわからない。え・すると・ひょっとすると・この記憶の空白は、ひょっとしてまた、あんなんなっちゃったのか?TV画面の自分の映像が甦ってきた。自分としては「とうてい受け入れられなかった」あんなことになっていなければいいが・・・。そして、さゆりのこの豹変は一体なんなのだ?
    しかし、今はそれ「ちょっとおいといてー」すべきだ。
「いや、あのね、ゆうちゃんが安本やったっけ、あいつらにやられてん。だからさゆりちゃんの助けが要るねん。至急来て欲しいねん」
「えっ。そうなんですか。どこにいるの?」
「だるまんとこの路地やねん。本店の方」
「ゆうさん、だいじょうぶなの。ひどく殴られたの?」
「うん、まあね。だからすぐに来て」
「救急箱持って行くわ」
「そう。急いでね」
「わかりました。すぐ行きます」
    
    やれやれなんだけども、しかし、この状況、自分一人で対応してていいのだろうか? ゆうは厭がっているが、新世界キッドのおじいさんや吉沢さつきに知らせた方がいいのではないか。安本たちは新世界キッドに因縁をつけた。そして、ゆうを殴った。ということは「敵の敵は味方」ということはないのだろうか? 利害関係はそう単純でもなさそうだが、ゆうの拒絶を見ていると。

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キッドは、カメラの存在を思い出した。この瞬間も・・・・。しかしここは暗く赤外線カメラだった。念のため、曾根崎キッドはカメラに映ったゆうたちの角度を思い出して少し反対側に立ち位置を変えた。ただし、この様子はさほど人の関心は惹かないだろう。
しばらくしてさゆりがやってきた。(つづく)

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2018年03月09日

曽根崎キッドの日々 37

    さゆりは「もうイク」と思った。「キッド・だめだわ、ごめんなさい」と見上げた。「ん?」

    唸り声が聞こえた。よく聴いてみるとその唸り声は「上」から聞こえてくる。

    唸っていたのは曾根崎キッドだった。「ガルルルル・ガルルルル」と唸りながらバイブに噛み付こうとしていた。洗濯棒の揺れによる刺激は曾根崎キッドがバイブに噛み付こうとして失敗していたからだった。曾根崎キッドは今、足のばたばたも止め、てらてら濡れているバイブの先端に集中し、噛み付こうとし、そして何度も失敗していた。
「ああーん、キッドったらぁ」

    さゆりはキッドがバイブに当たる度にちいさくエクスタシーを感じ、そしてやっぱりそれは少しずつ大きな波になろうとしていた。もう股間はびしょびしょで、視点も定まらなくなりつつあった。つん・つん・つんという刺激も意地悪で、さゆりはもう狂いそうだった。もう何もかもどうでもよくなってこの洗濯棒に股間をこすりつけたかった。もうこすりつけようと思った。

    そのとき股間に100万ボルトが走り、それは全身に広がっていった。さゆりは後ろ向きに倒れていった。倒れる時に見たものは、バイブの先端にかぶりつき、その動きに同調して首を回しながらさゆりの真上を飛んでいく異形の人物の姿だった。そのすべての動きはスローモーションのようで、さゆりは100万ボルトが痙攣に変わりながら、意識を失っていった。意識を失う寸前に思ったことは、「あのバイブ・女の子のアナルに入ってたなあ」ということだった。(つづく)

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2018年03月08日

曽根崎キッドの日々 36

    さゆりは一階に戻り、ビニールテープを取り出し、外へ出た。見上げると相変わらずの人物が相変わらずの動きをしている。

「キッド、待っててね、あたしが助けてあげるからね」
さゆりは夢中でバイブの根元を洗濯棒の先端にビニールテープでぐるぐるに巻き付け、先ほどと同じく棒を股にはさんで体重をかけた。棒の先端に取り付けられたバイブはぐいぃっと立ち上がった。「はぁぁぁっ」とさゆりからも声が漏れた。曾根崎キッドの視界に入るためには一番高いとこで固定しなければならない。股間がとても悩ましいが、腰をふんばって支点の少し先を手で支えると、バイブの先端は曾根崎キッドの目の高さにまであがった。「もう少しよ」

    曾根崎キッドの目の前でバイブがういぃぃんういぃぃんと動いていた。しかし、曾根崎キッドは反応しなかった。さゆりは「カジキマグロ釣り」をやる人の気持ちがわかった気がした。

    一分ほど経っただろうか。曾根崎キッドの、どこを見ているか分からない目がバイブの規則的な動きに反応したかのように見えた。さゆりは自分の股間がやや湿気を帯びてきていることを自覚していた。「でも反応してる」さゆりは股間の「濡れ」がこの行為の成功を占うものだ、というように考え直した。バイブの振動もその長い洗濯棒を通して微かに伝わってきている、と思った。

    見上げると、明らかに状況は変化していた。曾根崎キッドの顔がバイブの動きに連動しつつあった。「もう少しよ」

    曾根崎キッドの顔の動きはその波動が完全にバイブと同調していた。「がんばれ・さゆり」さゆりの股間はもうぬるぬるになっていた。そのとき曾根崎キッドの顔の動きがぴたっと止まった。さゆりは「ええっ」と声が漏れ、腰が落ち、洗濯棒を股間で少し後ろに滑ってしまった。びびっ、と身体に電気が走り、腰が抜けるかと思ったがふんばった。洗濯棒が揺れ始めた。さゆりは自分のチカラが抜けたために洗濯棒が揺れ始めたのだと思い、目を瞑ってもう一度、腕と腰にチカラを入れ直し、曾根崎キッドの顔の前で固定すべく、もう一度腰を落とし、腕にチカラを入れた。しかし、どんなにがんばっても洗濯棒の揺れは止まらない。そろそろさゆりの腰も腕もそして股間も限界に近づいていた。「ガルルルルル」「ガルルルルル」という大型犬の唸り声のような音が聞こえてきたが、「もうこんなときに犬なんて散歩させないでよ」と腹立たしく思った。洗濯棒の揺れは続き、さゆりは腕や腰の筋肉も限界だったが、股間がやばかった。イキそうだったのだ。(つづく)


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2018年03月07日

曽根崎キッドの日々 35

    部下Bは、両足首と両肘をテーブルの足に固定され足を大きく開かされ尻を高く上げさせられ顎をテーブルの淵にかけたシーメールの女の髪の毛を掴み顔を上げさせその喉を犯していた。部下Bの目に見える高い位置にあるシーメールの尻から急な角度で落ちている背中への反った線とその尻の間に埋め込まれている特別に長いバイブの動きがシーメールの女の悲しさを物語っていた。しかし、女はこうやるのが一番ええな・と部下Bは自分の興奮から思った。さゆりが持ってきた寿司と酒は半分ほど残っている。空調の効いたこの部屋で朝までゆっくりこの女をいたぶるつもりだった。部下Bは一日に一体何度射精ができるのか、試してみたかった。ゆうの言う通りアタマが小学生並みのこの部下Bは精力だけはどこまでもあった。「きんたま三人前」というのは、ゆうの言葉ではなく、実は部下Bが「履歴書の特技欄」に書いてきたのだった。
部下Bは女の喉奥深く突き立て、女の後頭部を抱えていた。女は息ができず抵抗していたがおとなしくなったので抜いた。「げほっげほっ」と女が咳き込むのをにやにやしながら見ながら酒を飲んだ。部下Bはまだ一度も射精していない。こういう場合、部下Bは一回目の射精にできるだけ時間をかける主義だった。本能的に自分の快感には知恵が働いた。女の咳が治まりかけると、女の鼻をつまんで口を開けさせた。
そのときドアを激しく叩く音がした。ゆうかさゆりに違いなかった。部下Bはゆうは少し苦手だったが、さゆりは好みだった。酒も入っていたこともあり、下はすっぽんぽんだったが、そのままドアのロックを外しドアを開けた。
「へへへへ、さゆりちゃん」
さゆりは部下Bが真っ赤な顔で、大変締まりのない顔で現れるだろうな、と予想はしていたが、その締まりのなさは予想以上だった。「ほんまもんのアホとはこういう姿をしているのだろう」と思った。しかも下すっぽんぽんで勃起までして、しかもそいつは脈打っていた。最低の生き物だった。
しかし、そんなことはどうでもいいのだった。
「お取り込み及びお楽しみのところすいませんが」
「ん? なに?」さゆりの切羽詰まった様子に部下Bは少し平常心がもたげてきた。それと反比例して、勃起の角度がやや下がった。
「あれを貸して」
さゆりは女の背後に駆け寄ると、女の肛門に深々とめりこんでいるバイブを掴むとゆっくりとそれを抜いた。女の口から「はぁぁ」と声にならない声が漏れた。バイブが抜けた跡はぱっくりと穴が開いていた。
「ちょっと借ります」
ドアを開け出て行こうとして、一言言ってやろうと思った。
「ビデオ回してますから」
「えっ」
ドアが乱暴に閉められ、部下Bの角度は「50代」ぐらいにまで一気に落ちた。(つづく)


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2018年03月06日

曽根崎キッドの日々 34

    エレヴェーターが開く。曾根崎キッドは相変わらずぴょんぴょん跳びながら乗り込んだ。ウエイトレスは近づきつつあったが途中で足がもつれ倒れた。曾根崎キッドはエレヴェーターの中でもぴょんぴょん飛び跳ねていたからエレヴェーターは揺れていた。テーブルの四人は驚くというよりも喜んでいた。今ものすごく見てみたいなあと思ってるものが現実に目の前で見れたのであるから、大満足で、両手の親指を立て、曾根崎キッドを送っていた。曾根崎キッドを乗せたエレヴェーターのドアが閉まり、下降しはじめた。曾根崎キッドは高速エレヴェーターが地上に着くまでぴょんぴょん跳び続け、ドアが開くと同時に飛び出した。一階で待っていたおばあさんが腰を抜かしてへたりこんでいた。

 曾根崎キッドは堤防のある川のほとりまで走った。向こう岸から投げられたとしか思えない、洗濯物を干す棒があった。曾根崎キッドはそれを拾い上げ30mほど下がり、助走を着けて「棒幅跳び」をやってみた。川の中央に先端は刺さり曾根崎キッドの身体は持ち上げられた。しかし、それでも勢いがまだ足りなかったのか、棒は直立した状態で止まってしまった。曾根崎キッドは普通の状態ではなかったから、精神的なパニックに陥ることなく足をバタバタしていた。しかし状況はそこから変化はないわけだった。

 さゆりは曾根崎キッドが泊まることになる部屋にいてお茶の葉を替えていた。空気も入れ替えようと思い窓をあけたところ、いつもはなにもないところで何かが空中に浮いているのに気づいた。それは棒の先端につかまり、振り子のように揺れ、どちらに倒れるでもなく、よーくみると知っている顔だった。「キッド・・・・・」
 そのとき、さゆりの中で好奇心は愛情へと変容した。
 「わたしの大事なひと・・・・」
 さゆりは家を飛び出し、目の前の川の堤防へと駆け上がり、「キッド・キッド」と何度も叫んだが、当の本人は視点の定まらない目で中空を見つめ、ただただ足をバタつかせているだけだった。さゆりは家の裏に回り、洗濯物の棒を持って曾根崎キッドへ届けようとしたが、女の細腕には重く的が定まらない。そこで堤防の角を支点にしてこちら側に馬乗りになって向こう側の長い方を持ち上げようとした。体重をかけたとき、さゆりは身体がびくっと震えたが、そんなことは言ってられないのだった。棒は曾根崎キッドの胸の辺りまでは達した。でも曾根崎キッドの視界には入らなかった。30cmほど長さが足りないのだ。さゆりも身体の芯に「ずしん」とくる刺激が苦しキモチよく長くはその姿勢に耐えられない。さゆりは堤防のこちら側に尻餅をつき、「あと30cm・・」と呟いた。
 そのとき、さゆりの目に光が戻り、立ち上がり、玄関からいえの中へと駆け込んでいった。曾根崎キッドは相変わらず視点が中空のどこか定まらず、足は空中散歩で行ったり来たりしているのだった。(つづく)
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2018年03月05日

曽根崎キッドの日々 33

    意識が少し遠くなる。曾根崎キッドには巨人のウエイトレスに首つりされている自分の姿が高いところから見えた。そのときだった。

 「けけけけけけけけけけけけけけけけけ」という声が聞こえた。その声はどこか高いところから聞こえ、そしてその音源は近づきつつあった。ウエイトレスは曾根崎キッドを吊るしたまま、きょろきょろしていた。きょろきょろしていたが一体その音源はどこにあるのかやっぱりわからないでいた。しかし、確実にそれはウエイトレスに近づきつつあった。ウエイトレスの顔に不安の色が走った。しかし、ウエイトレスの耳にはある時から音源が二つに聞こえだした。ひとつは近づき、もう一つはごく近くに。ウエイトレスはそんなはずはないと確信していたが、どうもそうなのだ。こいつはもう落ちているはずだった。それなのに・それなのに、そのもうひとつの音源はどう考えてもこいつの顔の辺りにあるのだ。ウエイトレスは少し恐くなった。しかし、そんなことはあり得ない。あり得ないがそんなことになりつつある。近づく声はさらに近づき、あぁだめだ、やっぱり重なってきた。ウエイトレスは勇気をもってそいつを見ようと思った。確実に落ちているはずだった。ぐったりしてるはずだった。ゆっくりと床におろしてあげてもいい。いや、おろして上げよう。そして蘇生させてあげよう。泡を噴くかもしれないな。少しやりすぎたかな。あぁ、しかしおれは・いやあたしは、こういうところをこいつらに見せないことには、おれの・いやあたしの仕事というか役割がこの場では成り立たないのよね。だから、しょうがないのよね。曾根崎キッドとやら、ごめんね。もうチカラ緩めるからね。いや、死んじゃったりしてないよね。それには表情見るのが一番いいからね。ちょっと見てみるね。やや緊張するけどね。そうっと見てみるね。だいじょうぶ・だよね。

 ウエイトレスはチカラを緩めながら、ナナメ前方45°を見た。そこにはベロを出した、アホづらで三白眼の曾根崎キッドがいた。ウエイトレスは安心した。これでこいつらへの面目が立ったというものだ。
 ただ、気になったのはさっきから聞こえていた声が一種類しかきこえなくなり、しかもその音はウエイトレスの顔の真ん前でしか聞こえないのだった。「ん?」とウエイトレスは思った。その時だった。
 三白眼だった曾根崎キッドの黒目が下へと戻った。そして、その目はウエイトレスに焦点を合わせ、そして、その口は異様に歪み、「けけけけけけけけけけけけけけけけけけ」と声を発し始めたのだ。
 「そ・ね・ざ・きキッド・や」ここへ誘ったお男が呟いた。

 ブロンディも夏木マリも口をぽかーんと開けていた。
 「ほへはひひっほ・や・・・」とブロンディが独り言を言った。
 ウエイトレスの腰が砕けるのを感じた曽根崎キッドは倒れるウエイトレスを踏まないようにウエイトレスの、地面に叩き付けられたアタマを跨いで着地し、「けけけけけけけけけけけけけ」と笑いながら、ぴょんぴょん跳びながらエレヴェーターに近づいていった。ウエイトレスは後頭部を押さえてのたうちまわっていたが、誰も同情している風でもない。曾根崎キッドはぴょん・ぴょん・ぴょんぴょんぴょんでエレヴェーターの前までやってきた。ボタンを押す。

 ウエイトレスがやっとのことで立ち上がり、自分の立場の回復が最優先することを認識した。よろけながらこちらへ歩いてくる。曾根崎キッドはエレヴェーター前でもぴょんぴょんしていた。ウエイトレスが近づいてくる。(つづく)


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2018年03月04日

曽根崎キッドの日々 32

 どうやらみなさんの「ふつーの男」に関する興味は見事にしぼんでしまってるみたいだ。「人の噂は7.5分やん」と曾根崎キッドは思い、そして安心した。
 目の前にあることが即座にその興味の上塗りをしていくタイプなのだ。そんなやつほんまにようおるが、こいつらはその典型だ。
 その映像には音はない。スキンヘッドは女の顔を張っていた。くそみたいなやつだ・と曾根崎キッドは思った。その様子をほんの五分間ほどの間の退屈を紛らわせるために食い入るように見ているこいつらも・ゴミだ。
 女はスキンヘッドに殴られ続けていたが、ある時スキンヘッドのきんたまを蹴った。輪郭がぼやけているからスローモーションのように見えたがスキンヘッドがその後身体を二つ折りにぴょんぴょん跳んでたからけっこう効いたのだろう。今度はヅラが女の腕を捻っていた。ヅラのもう片方の腕は女の胸を鷲掴みにしていた。
 その時カメラがズームした。こんなのもありなのか・と曾根崎キッドが思った瞬間、女の顔がエネルギー体のままアップになった。鼻と顎の線がゆうそっくりだった。エネルギー体が横を向き、曾根崎キッドはそのことを確信した。
 曾根崎キッドが突然立ち上がったのと、ウエイトレスが斜めうしろで「はーい、おまたせ」と声を出したのがほぼ同時だった。ウエイトレスは突然トレイを下から曾根崎キッドの肩で突き上げられ、ズブロッカの入ったグラスは宙に舞い、たっぷり液体をウエイトレスの顔に振り注いだ後、地面に落ち、割れた。
 「なにすんねん、こらあ」
 ウエイトレスは男に戻っていた。
 「なにすんねん、こらあ」
 ウエイトレスは曾根崎キッドの胸ぐらを掴んで持ち上げた。足が宙に浮き、顔と顔が同じ高さだった。アイシャドウが滲んでいた。テーブルの四人の興味は一瞬にして目の前の出来事へと移った。 ウエイトレスは両腕で曾根崎キッドの胸ぐらを掴み直し、さらに上へと持ち上げた。プロレス技のネック・ハンギングに近かった。シャツの襟が絞られて頸動脈が圧迫される。拳は顎に当たっていて痛かったが曾根崎キッドは身動きが取れなかった。このままでは失神してしまうだろう。(つづく)  

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2018年03月03日

曽根崎キッドの日々 31

「あ・安本ブラザーズや」
「何チャン?」もう一人の男が訊く。
「153」
 スキンヘッドと九一ヅラの二人組が大柄の女を引きずって路地の中へ消えていった。
「次どこや?」「ちょっと待ってな。あ・オッケー、97」
 曾根崎キッドも手元のキーボードを叩く。真っ暗の画面で何も見えない。曾根崎キッドの不思議そうな顔に応えるかのように「BRのボタン」と夏木マリが言う。言われたようにすると赤いエネルギー体が三体浮かび上がってきた。赤外線カメラかなんかだろうと曾根崎キッドは思った。
 シルエットからスキンヘッドとヅラの区別はつく。スキンヘッドが女の胸ぐらをつかんでいた。いやな想像が曾根崎キッドの中に生まれた。

 ゆうは部下Bとぐったりした女を地下の特別室と呼ばれる部屋へと案内した。
「あんまりむちゃしたらだめよ。この子今日初日でしょ」
「わかってるって。ビデオ回さんでええで」
「当たり前でしょ。社長にバレたらどうすんの。明日の朝、絶対寝過ごしたらだめよ」
「はいはい、わかってまんがな」
 部下Bは地下室のドアにロックをした。時計をみると5:00だった。時間はたっぷりある。今日は仕事はこれで終わりやし、と部下Bは思い携帯をポケットから取り出した。
「もしもし、さゆりちゅん、寿司二人前とお酒もってきてえや」

 ビデオはさっき回さないと言ったけども、さゆりにモニターをチェックしとくように、とゆうは指示した。そのときさゆりの携帯電話がなった。
「お寿司とお酒やって」
「すぐ、調子こくんだから、あのバカ。やっぱりビデオ回しとこう。社長にチクってあげよう」
「今度はどうやって怒られんのかな」
「怒られてもすぐ忘れるからいいのよ。アタマ小学生だもん。きんたまだけはなぜか三人前。どーぶつ」
「ふふ」
「しっかり見張っといて。アホなことやってたら、水でもかけなさい」
 「わかりました。ゆうさん、出かけるの?」
「うん、少し気になることが、ね」
「キッド?」
「それもあるけど、ちょっとね」
 「あの人少しかわいいけどね」
「あんまりやさしくしちゃだめよ。あとよろしくね」
  ヒールのあるブーツを履いて背筋を伸ばして歩いていくゆうを見送りながら、さゆりは「今度はいつなんやろ」と呟いた。
 「今度あの人に・・・・・・」(つづく)

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2018年03月02日

曽根崎キッドの日々 30

 10人ほどの男女が一斉にこちらを振り向く。一瞬の沈黙の後、歓声があがった。屋上だった。曾根崎キッドは男の後を歩いて大理石と思われる楕円テーブルの勧められた席へついた。そのテーブルには男が2人・女が2人、曾根崎キッドを見つめていた。好奇の目だった。しかし、曾根崎キッドは「人の噂も75分」ということはわかっていたから、熱を持って見つめてくれることはかえってありがたかった。このテの興味はゲインが高けれゃ、サステインは反比例して短いはずだから。
 「なんか、でもふつーだよね」ブロンディみたいなウィッグ(だろう)を着けた女が誰に話すでもなく言った。

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 曾根崎キッドは敢えて無表情を崩さなかった。もうひとり夏木マリみたいな女が「どうぞ」とシャンパーニュを注いでくれた。曾根崎キッドは口を付けた。おいしいシャンパーニュだった。こいつらもあのケーブルTVの映像を見たわけだ。あのインパクトの怪人と今彼らの前のふつーの男、共通点をみんな探っているのだが、そんなものあるわけがない。自分でも見てびっくりしたぐらいだから。居心地の悪い時間を過ごすことになった。曾根崎キッドはもっと強い酒をたくさん飲みたくなった。見回すとバー・カウンターにバーテンダーと巨大なウエートレスがいた。軽く手を挙げると、その巨大なウエートレスは大股でやってきた。きれいに化粧してウエートレスの衣裳も似合ってはいるが「むっちゃおとこやん」と曾根崎キッドは思った。ヒールを合わせると190cmはあるな。胸もぱんぱんだったが、中身は生理食塩水だろう。
 「ズブロッカある?ロック・レモントゥイスト」「かしこまりました」「わたしも」ブロンディが言った。近くで見るとウエートレスのカオはかなりでかかった。
 大企業の会議室みたいなモニターがひとりひとりの前にあった。曾根崎キッドの前にもあった。それはテーブルに埋め込まれていて、「UP」と書かれたスイッチを押してみたら立ち上がってきた。勝手に画像が映りスクロールし始めた。画像を見ていて曾根崎キッドは理解した。このモニターには新世界のすべてのカメラからの画像が映る。そしてその数はざっと今見ただけでも100は下らないようだった。新世界キッドが言っていることは正しく、しかし、そのカメラの数はそれを超えていた。
「あ・安本ブラザーズや」夏木マリが叫ぶ。(つづく)

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2018年03月01日

曽根崎キッドの日々 29

しばらくして男はボトルとショット・グラスと氷と水の入ったグラスをトレイに乗せて戻ってきた。
「ちょっとくせあるかもしらんけど、きっと気に入ると思うわ」と言いながら二つのショット・グラスに七分目ほどウィスキーを注いだ。
「じゃあ、出合いに乾杯しよう」グラスを上げ、曾根崎キッドもそれにつられてグラスを上げた。
 たしかに少しオイルの香りがする個性的な味だった。「いける?」と男が目で言うから「そうやね」と曾根崎キッドも目で応えた。
「ロッホ・ロモンドって言って、蒸留所の名前」「はあ」
 寒いぐらいに空調が効いていた。

 いったい、この男は自分になんの用があるんだろう。単なる旬の興味か。

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 大阪湾の上にある空が血の色をしていて、この夕焼けを毎日見ていると、なにか「ふつう」なことでは満足できなくなるだろうな・と曾根崎キッドは思う。中庸でいる自分が許せなくなったりしないだろうか。ひょっとしてこの男もそうなっているのだろうか。間違いなく金持ちみたいだし。
 「ぼくら曾根崎キッドのファンやねん」
 ファンって・・・突然そんなことを言われても困ってしまうのだ。「これから友達にも紹介するから。今日時間だいじょうぶ?」
 曾根崎キッドはそのウィスキーを一気に喉に流し込んだ。重い液体が食道を通っていった。喉の奥には熱さが残った。しばらくおいて氷の入った水でその熱さを薄めた。
 金持ちたちの一時の慰み者になるのはいやだな、と曾根崎キッドは思った。こいつらはきっと今日・明日ぐらいはちやほやして、対象を消費した後は路であっても目も合わさないタイプだ。
 「そろそろ行こうか」大阪湾はその色を失い、高速の灯りの背景へと成り下がっていた。



 曾根崎キッドは、しかしこれからゆうのところへ戻っても、曖昧な気持ちのまま戻っても仕方がないな、夜遅く帰って寝るだけにしようと思い、時間をつぶそうと決めた。それにはこいつらのようなスノッブは都合がいいかもしれない。
 男についてエレヴェーターに乗った。男は一番上の数字ではない横長のボタンを押した。「IL SALONE」と読めた。下の数字は39まであった。音もなくドアが開いた。(つづく)

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2018年02月28日

曽根崎キッドの日々 28

「ちょっと付き合ってくれへんかな」
 近くで見ると男はセルロイドのような皮膚をしていた。「すぐそこやねん」
 曾根崎キッドは残りの五百円玉を握りしめた。先に打った五百円分の玉もひとつも入らず、下の穴へと吸い込まれていった。
 この男から逃げることも出来たかもしれない。しかし、妙な磁力のようなものがその目にはあり、曾根崎キッドは金縛りにでも遭ったように、特に脚にチカラが入らなかった。
 男は曾根崎キッドを抱えるようにしてさっき信号無視をして渡った路まで歩いた。停めていたクルマに曾根崎キッドを乗せ、シートベルトをし、自分も運転席に滑り込み、キーを廻すと同時にアクセルを噴かし、タイヤを鳴かせ、強引にUターンした。またクラクションが鳴ったが、それらは曾根崎キッドにはなんだか遠くに聞こえたのだった。


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 マセラッティは高層マンションの地下駐車場へと滑り込み、止まった。

「こっち」
 男は曾根崎キッドをクルマから下ろし、また身体を抱えるようにしてエレヴェーター・ホールへ。34という数字を押した。
 そのフロアすべてが男の家だった。一面の窓からは生駒山から大阪湾まで一望でき、通天閣にはすでに灯りが点っていた。
「この時間が一番いいねんなあ」
 男はそう言いながら曾根崎キッドにソファーを勧めた。適度な柔らかさの皮だった。脚のしびれはなくなっていた。
「何か飲む?ぼくはシングル・モルトにするけど」曾根崎キッドは頷いた。
「どこのんがいい。ご希望には沿えると思うけど」
 曾根崎キッドはトドムンドにあったシングル・モルトを思い出してみた。
「じゃあ、ハイランドのを」
「東西南北?」
「南」曾根崎キッドは当てずっぽうで答えた。
「任せてくれる」曾根崎キッドは頷いた。男は奥へと消えた。
 いったいここは何なのだ?と曾根崎キッドは考えた。やつは誰だ?逃げ出すことも一瞬考えたが、無駄なような気がした。
 曾根崎キッドは立ち上がって窓の外を眺めた。スパ・ワールドを見下ろすことになる。その街は上から見ると絶望的な光景だった。つい今までそこにいたのが嘘みたいな距離感を感じた。そして真下には飛田の街がこじんまりとしてそこにあった。曽根崎キッドはつい先ほど意識の中で倒壊させた建物の中に今いることに気づいて唖然とした。(つづく)

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2018年02月27日

曽根崎キッドの日々 27

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    目をそらさずじいーっと見られるのはあまり愉快とはいえない。が、しかし、今新世界では自分は「かなり有名人」なのだ、と曾根崎キッドは認識を新たにした。そうなのだ・そういうことなのだ。立山をお代わりし、雑炊用のごはんとねぎと卵も注文した。たばこに火をつけ一息ついた。雑炊の材料が来たから、たばこを置き、ごはんと立山少々を鍋に投入しコンロの火を強火にした。すぐに煮立ってきた。卵を溶いて上から廻し入れる。ねぎをぱらぱらと蒔いて素早くふたをし、火を止めた。三十数えて、曾根崎キッドはふたを開ける。卵が半熟で食欲をそそる。「うまそーっ」と声には出さず、レンゲでよそう。濃厚な旨さが凝縮されて、それで曾根崎キッドは立山を飲んだ。雑炊に夢中になっている間、視線と男のことは忘れていたし、それはなんぼなんでも、もうこっちなんか見てないに決まってる・と高も括っていたからだった。
 だから、雑炊を食べ終え、立山を飲み終え、たばこに火をつけて大きく煙を吐き出した時に依然としてこちらを見ていた男の目にはなにかパラノイアックな執着を感じ、背中に、すっと汗が一筋流れたような気になった。曾根崎キッドは悪いことした子のようにあわてて目を逸らしたのだった。
 店を出よう。
 店員に合図をし五千円札をカウンターにおいて釣りも取らず、店を出、ジャンジャン横丁の中を小走りに南へ。地下道を駆け抜け、信号が赤だったけどもクルマに手を挙げながらなんとか路を渡り、さらに南へ進んでパチンコ屋へと飛び込んだ。少し息が切れた。ハネものを探し、その座席の一つに座った。ポケットを探ると五百円玉があった。左上のスリットに入れ、出てきた玉を打ち出す。
 あっという間に負けてしまった。小銭はもうなかったから、両替に席を立った。台も替えよう。ポケットから千円札を出し、両替機に入れる。五百円が二つ出てきた。それをもって馴染みのある台を探した。レレレがあったからそこへ座る。玉を出してレバーを握ったその時だった。すーっと影のように隣の席に誰かが座った。とっさに曾根崎キッドはそちらを見た。
 あの男だった。
「曾根崎キッド・だね」と抑揚のない声でそいつは言った。
「あ・打って打って。終わるまで待ってるから」
 そう言って男はにっこり笑ったが、その目には感情がない・と曾根崎キッドは思った。(つづく)

   

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2018年02月26日

曽根崎キッドの日々 26

 これ以上話してても、新世界キッドのおじいさんはなんとなく核心からは距離をもってるな、と曾根崎キッドは感じ、「ちょっと一杯行ってきます」とミファソを出た。さつきがやってくるかもしれなかったが、なんとしてもさつきと話をしなきゃ、という気分でもなかった。
 曾根崎キッドはジャンジャン横丁へと向かった。また串カツでも食べようかと思い、先日ゆうと行った店に行こうと思った。店の前には意外にも行列が並んでいた。日曜日だった。串カツ屋は地元以外のヒトが来る日だった。曾根崎キッドはきびすを返してジャンジャン横丁の入り口を横に入った路地の空いている店に飛び込んだ。 少し酔いたい、と思った。
 日本酒のラインナップを見て、曾根崎キッドは少し嬉しくなった。立山の普通酒があった。それを頼むと10秒で出てきた。串カツもあったから数種類頼み、モツ鍋も注文した。すぐに店員が目の前のコンロにふたのしてある一人用鍋を持ってきてかけた。「10分ほどで」と言い残して去っていった。立山を飲みながら、なぜトドムンドの社長は自分の事をバラしてしまったのだろう、と考えた。それによってすごくやりにくくなったのは事実だし、実際にこちらへ来てからいろんなことがありすぎて、何をするのかがよくわからなくなってきた。ゆうは味方ではないとは思うが新世界キッドのおじいさんやさつきにしてもどこまで信用していいのやら、そして根本的なとこではトドムンドの社長だって、一体何を考えているのか。 全然わからない。
 コップ酒を三口ほどで飲み干し、お代わりと黒ビールを頼むと、串カツがいっしょに出てきた。
 「芥子をください」と店員に言うと、小皿にチューブからうにっと絞ったのを持ってきてくれた。ソースをつけ芥子をつけ、涙出そうなくらい辛い串カツを食べ、黒ビールを飲む。時計を見れば5:30だった。串カツを大方食べ終わった頃にモツが煮えてきた。ふたを開ければ湯気と共にやや危険な香りが立った。その香りは曾根崎キッドを挑発しているかのようだった。一旦はしをつけるともう止まらなかった。立山をお代わりし、モツと野菜を食べ、濃厚なスープを啜り、立山を飲み、曾根崎キッドは「トドムンドの赤ワインもいいが、こっちのこういうのも捨て難いな」と思う。多少自堕落になっているかな。それもヨシじゃないかな。
 立山をもう一杯お代わりしようと顔を上げたとき、視線を感じた。L字型のカウンターの反対側に男がいた。その視線はそれまで数分間曾根崎キッドに固定されていたのだな・という気がした。(つづく)  
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2018年02月25日

曽根崎キッドの日々 25

 新世界キッドの顔色が一瞬曇ったのを曾根崎キッドは見逃さなかった。曾根崎キッドは自分の勘に賭けようと思った。
 「おれが四天王寺で拉致されたとき、そいつらの中に、ゆうちゃんがいたし、あの建物から脱出するとき、手引きしてくれたのもゆうちゃんやったし、実は今夜の宿を提供してくれてるのもゆうちゃんなんですよ。拉致したヤツらの一味ってことをおれが気づいてるってことはまだたぶん向こうは気づいてないと思うんやけど」
 「あんた、飛田の広い路の突き当たりのあの家におるんかいな」
 「ええ、あの辺ふらふら歩いてたら、ゆうちゃんと偶然出くわして」
 「えらいとこいってもうたなあ」
 「やっぱ、ヤバいっすか」
 「今日は帰る言うてんの」
 「はあ」
 「そう言うて帰らへんのもなあ。まあ、遅なってもええから帰るか」
 「ゆうちゃんにはそう言ってるんですが」
  新世界キッドの眉間に一瞬深い皺が寄り、その表情はまさに新世界キッド・と曾根崎キッドは思った、がすぐにその皺は拡散し、喫茶店のマスターのおじいさんの顔に戻った。
 「なんにせよ、何時でもええから帰った方がええやろ。まあ、あんたのことはいっつも監視してるやろけどな」
  曾根崎キッドはゆうのいた家で見た新世界のケーブルTVのことを思い出した。
  「ケーブルTVのカメラは何個ぐらいあるんですか?」
  「わしが知ってるのは12カ所やが、その5倍はあるやろな、画面見てたら」
   ということは60カ所だ、少なく見積もっても。今こうしてキッド同士で話をしていることさえ、望遠レンズが捉えているのかもしれない。(つづく)


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2018年02月24日

曽根崎キッドの日々 24

「社長のこと知ってはるんすか」  
「隠しといても、しゃーないか。 別に隠す気ぃもないねんけどな。あのな、実はカズさんなぁ、さっちゃんの昔の彼氏なんや」
「それは、さつきさんに聞きました」
「結婚寸前まで行ったんやけどなあ」
「へーえ」
「それがなあ、なんや知らんけど式の日取りまで決めた翌日に、さっちやんが突然結婚やめる、言い出しよってなあ」
「ほーう」
「いまだにはっきりしたことはさっちやんも言うてくれんねんけど、どうもわしが思うにカズさんのオンナ関係やろ」
「はーあ」
「最近はええおっさんなっとるが、若い頃は、ちょっとおらんようなやさオトコやったしなあ」
「へーえ」
「何人もおったらしいで、オンナ」
「ほーう」
「そうそう、そんとき嫁さんもおったらしいわ」
「はーあ」
「嫁さんおったら結婚はできませんわ、そもそも」
「ふーう」
「さっちゃんの方がだいぶ入れ込んどったからな」
「へーえ」
「まだ短大出てすぐぐらいやったからなあ」
「はーあ」

「あんた、割におもんないオトコやのう」
「いや、聞いてるんですよ。そこらはよくわかったんですけどね、なんで社長はテレビであんなこと言うたんでしょう?」
「あんなこと、とは?」
「いや、だって、社長はおじいさんのことなぁんにも知らんみたいに言うてたじゃないですか。でもほんとはむちゃ知り合いなんでしょう?」
「よう知っとる」
「じゃ、なんで・・・・」
「あんた、だいぶ鈍いのう。わしとあんたがつるんでるいうことが誰かに知られん方がカズさんにとって都合良かったんやろな。言うてももうばれとるが」
「誰かって・・・・」
 曾根崎キッドはその誰かとは自分を拉致した組織に深く関係していることは理解できたが、では、ゆうはどうなのだろうか、と思った。新世界キッドなら知っているかもしれない。
 「あの・・ゆうちゃんて娘、知ってはります?」                          (つづく)
 

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2018年02月23日

曽根崎キッドの日々 23

「なにが、おいっす、やねん」と曾根崎キッドは思った。そもそもトドムンドの社長に頼まれてこの街へやってきたのに。「そんなとこにいたのー?」はないだろう。それに「なにが、カウパー氏腺液やねん。よーわからんぞ」帰ってから確かめねば。
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しかし、正体バラしてんのトドムンドの社長やん。曾根崎キッドは敵と味方が斑に入り混じったところに放り込まれたと思った。
「では、わたし、仕事がありますので」さゆりが部屋を出て行く。「どうも」
映像はまた新世界のさまざまな場所へと切り替わった。曾根崎キッドは立ち上がって窓のところまで行き外を見た。男が足元のふらついたおんなを抱えながらこの家へと入ってきた。

顔が売れてしまったこの場合、これはメリットなのか、デメリットなのか。それにしても長い一日だ。あまりにいろんなことが起こり、いろんなことがわかった。わかったがしかし、まだ゛わからないことが多すぎることもわかってしまった。そして、変なとこで顔が売れてしまった。吉沢さつきに会いに行こう。そもそもトドムンドの社長はさつきに協力してくれ、と言っていたわけだから。ミファソへ行ってみよう。

曾根崎キッドは玄関で靴を履き外に出ようとした。さゆりの姿はそこになく、長い廊下の先でひとが喋っている声がした。おとこの声とおんなの声。さっきやってきた男女だろう。ゆうがにゅっと顔を出した。
「キッド、出かけるのね。遅くなっても鍵はかけないでおくから」「ありがとう・・・・・・・・・・ゆうちゃん」ゆうはにこっと初めて笑った。曾根崎キッドが、それに応えて笑おうとした時にはその顔はすでに無表情へと戻っていた。

ミファソへ行くと新世界キッドのおじいさんがいた。曾根崎キッドを見て、笑いながら「また、えらいことになっとんなー」と他人事のように言うから「たのむで、しかしー、ですよ、ほんまー」「カズさん、ばらしてまいよったな、あんたのこと」
 「えっ、社長のこと知ってはるんすか」 (つづく)
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曽根崎キッドの日々 22

 異形の人物は目が血走り、その表情はうすら笑いの中にある種の集中を見せ、悪魔的でもあった。キャプションと↑が付いて<曾根崎キッド >とあった。「えっ?」と曾根崎キッドは声を上げた。さゆりは「ね、わかるでしょ」という意味だろうか。曾根崎キッドの方を向いて頷いた。曾根崎キッドはなかなかショックを受けていた。自分がイッちゃってる時の顔はあんななのか、と思うと、自分が他人なら「受け入れられない」と思ったし、第一その様子が極端に異様だった。しかもそいつは眼球を上に集めて「けけけ」と笑い声を上げた。その時おじいさんが画面からすっ、と消え再び画面に現れ、スキンヘッドの歪んだ表情が思いっきりこちらへ近づいたかと思うとおじいさんの身体と共に驚くべき速さで遠ざかり画面から消えていった。ゴツンと鈍い音がした。
 そして髪の毛が顔を覆ったおとこが映った。そいつは左右対称に前髪をかき分け、一瞬静止したかと思えば、「おのれら・・・」と声を張り上げおじいさんに向かって右ストレートを打ってきた。顔面に当たったように見えた。そしておじいさんのアタマは画面から消えていった。一瞬おとこの目が泳いだ。そのときおとこの顎が変な角度ではね上がり、口から赤いものを吹きながらゆっくり画面から消えていった。次のショットでは後頭部を押さえて痙攣しているスキンヘッドの男と、ズラがずれ、口のまわりを赤く染めて動かない2名の姿が映し出された。後ろに現れた悪魔的な男は二人をぴょんぴょん跨いで跳ねながら、「けけけ、けけけ」と笑い、口のまわりが真っ赤な男の頭を跨いで立ち、膝も曲げずに前屈し、男の頭に手をかけ、ズラを外した。そして店から出、ヅラを自分が装着し、二三度首を左右に振り、「コンドーですっ」と叫びヅラを飛ばした。そこで映像は止まった。口が歪み、両目は真ん中上により、そしてヅラは頭部から外れて50cmぐらいのところで浮かんでいた。
 さらに驚いたのはその後だった。その吉本の司会の男が部屋でVTRを見ているのだがカメラがパンしててそこに映ったのは・・・・・・・・・・・・。トドムンドの社長だった。曰く、
 「これこれ、これうちの曾根崎キッドやん。曾根崎デッド・エンド・ストリートのヒーロー、かつ、大バカヤロー。まあ例えて言えば、この路地のカウパー氏腺液っちゅーかんじかな。第一ピーー汁って言うてもええかな。え、こんなとこにいたの。すごいねー。でもね、このヅラ飛ばし、おれが教えたのよ。いやーやってるなー。え、このおじいが新世界キッドって言うの?ほぅー、奇遇だね、偶然だね、同じようなタイプっているんやなあ。うちのキッドも何十年かしたらこうなるんやな。ええ感じやん。まあ何事も勉強アンド経験。一回り大きくなって戻ってくるのを待ってるよー。身体に気をつけてー。おいっす」

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 「なにが、おいっす、なのだ」と曾根崎キッドは思ったが、さゆりはくすくす笑い、「と、いうわけで新世界の有名人なんですよ。時の人というか」(つづく)

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2018年02月21日

曽根崎キッドの日々 21

 新世界だった。10秒ごとに画像が切り替わる。通天閣内部、パチンコ屋、別のパチンコ屋、超シブなパチンコ屋、将棋、スパ・ワールド、フェスティバル・ゲート、いずもや、映画館、スマート・ボール、寿司屋、ストリート、喫茶店、ジャンジャン横丁、たこやき屋、串カツ屋、駐車場、通天閣入り口、サウナ、朝日劇場、浪速倶楽部、通天閣歌謡劇場、ビリケン、日吉食堂、散髪屋、 新世界稲荷、動物園前駅の改札、恵比須駅。右下にも、八重勝30分、だるま35分、てんぐ10分、うずうずバーン60分、ウォータースライダー25分と待ち時間が出る。

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 新世界のケーブルTVだということはわかった。しかし、それと自分の正体が知られることにどんな関係があるというのか。
 そのうちに画面が切り替わって「しんせかいこんにちは」というタイトルが現れ、すぐに曾根崎キッドのきらいな、吉本の最近とんと見ない芸人と、通販のCMに出てくるような、化粧の濃い、胸だけが取り柄のようなおんなが出てきた。
 「いやーしかしすごいですね。またまたリクエストが100クリック超えました」「今回は別角度の映像があるんですよね」「そうなんですよ。迫力が全然違いますからね。それでは、早速ね、放映したいと思います。昨日からするともう7回目のへヴィー・ローテーションになります。で・も・今回は別角度の新映像でお送りします。キッド・タッグvs安本bros.!!!!」
 「キッド・タッグ?」いやな予感がした。
 
 おじいさんがスキン・ヘッドに吊るし上げられているところをおじいさんの斜めうしろのアングルから撮った映像で始まり、それは曾根崎キッドがまだ鯖の骨しゃぶっていたときのスキン・ヘッドの発言も記録されていた。ガラスが割れる音がした。
 「こるぁ、すんませんで済むんやったらけーさつもソニー損保もいらんのじゃ、新世界キッドやいうからこっちも気合い入っれて来たらおじいやないけ。この安本兄弟をナメとったら、寿命ちちむでぇ。まあ、今日はちょいと縮んでもらわなあかんのかなあ。あかんかもしらんなぁ。あかんやろなぁ。あかんなぁ。あかん可能性がたかい。いやあかんのよ。あかんというのが妥当。あかんにちがいない。あかんことを確信してる。もーぜったいあかんじゃなきやいやん。こるぁぁぁ、止めんかい、ぼけぇ。どこまで言わすねん、あほぉぉ。おれはなぁ、ロンリ的な人間なんじゃぁ、ロリ的ちゃうぞぉ、ロンリやぞぉぉ」
 「すんまへん。わし、そんななんやらキッドとちゃいまんねん。そこのコーヒー屋の主人でんねん。ロリかロンリが知らんけどにぃちゃんそれなんか勘違いですわ」
 「じゃかぁしぃ、ねたは割れとんねん。お前とピーーがつるんでわしらのピーーをピーーするつもりっちゅう情報はいってきとんねん。あのな、いまマンションではふつうのピーーよりピーーが高なってしもてんねん。ピーーのせいでなぁ。」ケーブルTVはプライバシーには配慮しているらしい。
 その時画面の右上に異形の人物が見えた。          (つづく)

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2018年02月20日

曽根崎キッドの日々 20


「しつれいします」おんなの声で我にかえった曾根崎キッドは、窓はそのままに障子の所まで行って「はい」と返事をした。
「お茶を持ってあがりました」さゆりだった。
 障子を開けると、さゆりは正座して、玄関の時と同じく三つ指ついて頭が床につきそうだった。
「入ってもよろしいですか」「どうぞどうぞ」
 さゆりは急須の蓋を開け、ポットからお湯を注ぎ、「しばらくおまちくださいね」と言った。もう夕方だった。
 ひと呼吸置いてさゆりが口を開く。
「曾根崎・・キッド・・さん・・です・・ね」
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 部下Bはおんなを迎えにマンションの入り口に立っていた。あの映像はケーブルTVでマンション群全部に流され、24倍の倍率で30代のIT企業の幹部によっておんなは35万で競り落とされた。朝までコースのはずたったが、幹部に急な仕事が入り、出るからおんなを迎えにきてくれ、と連絡があった。おんなを送ってから5時間ほど経っていた。しかし今日はビデオカメラが回っているとは言え、あんないい半玉をヤれたのは久しぶりでいま思い出しても股間が疼く。時間より早くあがるおんなを迎える。部下Bは携帯を取り出した。「もしもし、ゆうさん?特別室どれか空いてない?」

 さゆりにそう言われて曾根崎キッドはアセった。「曾根崎キッドさんですよね」
 キッド「さん」にも違和感があったが、さゆりが知っているということはあのおんなも知っているということで、その背後がいまだに見えないが、自分を知っているのは、さつきと新世界キッドのおじいさんとウタマロちゃんだけのはずだ。この3人が裏でここのあのおんなと繋がっているとはにわかには信じられなかったが、それこそよそ者の思い込みかもしれないわけで、曾根崎キッドはそうすることが安易に結論を早める予感があったけども、思い切ってさゆりに尋ねた。
 「どうしてその名前を?」
 「え。だって昨日からもう有名ですよ。知りたいですか」「知りたい」「ゆうさんには内緒ですよ」「ゆうさんってひょっとして・・・」「あら、名前しらなかったんですか」
 さゆりはTVのリモコンを手にして「いいですか」と言いながらスイッチを押した。民放と民放の間の使っていないチャンネルに合わせた。見たような風景だった。   (つづく)

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2018年02月19日

曽根崎キッドの日々 19

 その家は奥行きがかなりあって、しかし、曾根崎キッドはあがってすぐの階段をおんなの後について上った。一番最後に見た時に思った、印象を再確認した。おんなの後ろ姿は、その無表情とは違って躍動感があった。形のいいふくらはぎに筋肉が透けて見え、なにかある一時期集中的にスポーツをやっていたことを窺わせた。
 「ここを使って」二階の一番奥の部屋の障子を開けておんながいった。四畳半のあっさりした部屋だが床の間があり、インドの仏をモチーフにした掛け軸が掛かっていた。ちゃぶ台を久しぶりに見た。置かれてあった薄い座布団におさまり、その前に正座して座ったおんなと目が合う。
 曾根崎キッドは目を逸らした。「何か要るものがあれば、あたしか、下のさゆりに言って。お腹は?」「いや、だいじょうぶ」「お寿司ぐらいならとれるわよ」おんなは立ち上がり部屋を出ていきしなに、「あ、スニーカーありがとう。使ってるわ」と言った。
 曾根崎キッドはおんなの足が26cmだったことを思い出した。もやっとした違和感があった。
 
 おんなが行ってしまってから部屋の建て付けの悪い窓を開けてみた。川が流れ、堤防があり、そしてその向こうには巨大なマンション群がそびえ立っていた。一番下、と思われるフロアでさえ、通常のビルの5・6階に相当する高さにあった。そこから地面までは傾斜のついた巨大すべり台のような土台で壁だ。震度6強の直下型地震でも大丈夫といううたい文句だった。そういえばこの下には上町断層があった。  
 
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 曾根崎キッドは頭の中でそのマンションたちを崩してみた。巨大地震を当てはめてみた。
 強度を誇るとされるマンションのその土台があっけなく陥没し、下の階から順に柔らかなムースになって潰れていくのだった。そのマンションの乱立する地区は荒野になり、砂煙があがり、こちらの色街の人々が見つめつづけているうちに砂煙が解消し、そこに現れたのは呆然と立ち尽くす裸の男女の群れだった。色街の人々は服は着ている。しかし、誰からともなく服を脱ぎだし、それを丸め、川の向こう岸に向かって投げ出した。呆然と立っていた向こうの人々は先を争いながらそれを拾いにかかる。こちらからはさらに多くの服が投げられるがまだ足りない。人々はその服を奪い合い、おとなが子供を殴り、少年が老人を蹴り、おとこがおんなを踏みつけていた。そのうちこちらの人々は全員裸になり、もう投げるものがなくなり、目に涙を溜め向こう岸をただ見つめていた。向こうからはまだ服を手に入れられないひとびとからの罵声が響き渡っている。そのうちにまだ服を手に入れる事のできない人々が、川に飛び込み始めた。何人もの人がヘドロに足を取られ、身動き取れなくなり、力尽きながら沈んでいった。辺りを見回すと、高い建物がなくなり、視界が開けていた。ただ通天閣だけが誇り高く屹立していた。

(つづく)

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2018年02月18日

曽根崎キッドの日々 18

 曾根崎キッドは今夜の宿が必要だった。スパ・ワールドにはしばらく行けない。ジャンジャン横丁をどんどん南下していった。南下するにつれてどんどん街はシブくなってくる。おっちゃんらの数が増え、その様子も限りなく自堕落になっていく。左手に空間が開けた場所へとやってきた。大きな門の跡があり、そこはかつて意味をもった場所であることはすぐにわかった。曾根崎キッドは吸い込まれるようにその中へ入っていった。そこは過去に、というより今も意味を持つ場所だった。曾根崎キッドは、後からクラクションを鳴らされ、路の端へと移動した。ミニバンに4人の男子が乗り物色していた。屋号を表す看板が一列に並び、桃色の灯りが灯りだしたその一帯は夢の街だった。曾根崎キッドも似たような所に住んではいたが、その規模は段違いだった。ミニバンの中からは牡の体臭が外へと溢れ出ていた気がした。
 「にいちゃん、にいちゃん」おばちゃんが曾根崎キッドに声をかける。「一万円でええから」若いオンナが座っている。何軒かの前を通るうちにあるおばちゃんからは腕を掴まれたりもしながら、曾根崎キッドはその街を歩き続けた。そのうちに過去の、そこで働くオンナたちの悲惨な境遇に関する逸話を思い出したりもしたが、その街を歩き続けることは官能的だった。多分に桃色の灯りといかにも遊郭然としたそれぞれの家にやられているだけであったとしても。曾根崎キッドはエキゾティズムの虜になっていた。
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 その街のはずれまでやってきてもう引き返そうと思った時、おんながひとり玄関から出てきた。曾根崎キッドは息をのんだ。あのおんなだった。
 おんなは身体に張り付くような黄色のミニのワンピースを着ていた。一瞬驚いたような顔をしたがすぐに無表情になり、そして曾根崎キッドに手を差し伸べた。曾根崎キッドは迷った。
 「寝る所がないんでしょ」おんなが無表情のまま、口を開いた。「はなれが空いてるわ」
 おんなが、曾根崎キッドはもう気づいてしまったことをわかっているか、それはわからなかった。朝、太陽の残像の中から現れたのはこのおんなだった。ここから先は今までとは比べものにならない危険が待っている予感がしてきた。しかし、曾根崎キッドはおんなの誘いに乗ってみることにした。トドムンドのマスターがよく使うことわざに「虎穴に入らずんば虎児を得ず」というのがあった。
 おんなに手をつながれて、中へと入った。そこには、他所ではやり手ばばあの場所に若いおんなが座っていた。白いソックスを履き、三つ指をついて「いらっしゃいませ」と言った。こんなタイプの若いおんなってまだいたのか?と曾根崎キッドは思った。(つづく)

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2018年02月17日

曽根崎キッドの日々 17

 さつきと別れて曾根崎キッドは新世界へと戻った。連絡は「新世界キッドの店・ミファソ」で取ることにし、お互いがいなければ、伝言で、ということになった。曾根崎キッドの所持金が少なくなっていた。さつきに借りてもよかったのだが、なんとかなる気がしたから、それは言わずにいた。資金稼ぎだ。新しいめのパチンコ屋へ行くことにした。結構混んでいたが、よさそうな台があった。座ると右側に何か圧迫感を感じた。ちら、と見ると、完全にやくざだった。足をがっと開いているから曾根崎キッドは身体を斜にし、顔を左に向けて打ち出した。早くも大当たりがきた。新しい店はBGMがJポップで最低だから長くいる気がしないのだが、大当たりの球数が多いから本日は短期決戦で早めに切り上げる気でいた。いつものようにタバコをふかしながら打つ。2度目の大当たりもすぐにやってきた。快調だ。大当たりが終わってまた打ちながら片手でタバコに火をつける。「ちっ、ちっ」という音に気づいた。パチンコ屋はノイズの洪水現場みたいな所だから、にわかにはその音の方向がわからないが、耳を澄ますとそれは曾根崎キッドの右斜め後方から聞こえてくるのだった。そこには足をがっと開いたやくざが打っているはずだった。ちらっと振り返ってみた。座った目がそこにあった。その目は曾根崎キッドの目が、視線のターゲットとして10分前からそこに来るはずだったかのような周到さで固定されていた。
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 曾根崎キッドは一瞬たじろぎ、自分はこの男に何か悪いことをしたか、とあらゆる角度から検証してみたが何も思い浮かばず、そして視線を戻したのだった。その時、
 「おい」曾根崎キッドは振り返った。「おい、フクリュウエンて知ってるか」
 「は?」「フクリュウエンや。フクリュウエンはカラダにわるいねん、知ってるか」
「はあ?」「フクリュウエンや。お前が吸うてるそのタバコから出るフクリュウエンが、さっきからずうっとわしんとこに流れてきとんねん。お前、知ってんのか、副流煙がチョクでおまえが吸うてる煙より、一酸化炭素で4倍以上、ニコチン2倍、アンモニアにいたっては50倍やぞ。そんなことすんの犯罪やぞ」
 犯罪やぞって、ほかの犯罪しょっちゅうやってるようなおっさんに言われたないわ、と曾根崎キッドは思ったが、「すんません」と謝って火を消した。不条理に近いものを感じたが、ここはもめるとこじゃないと思ったし、この球の量なら1万5千円ぐらいはありそうだったし、両替することにした。(つづく)

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2018年02月16日

曽根崎キッドの日々 16

白のボルボ自体が珍しく、曾根崎キッドは自分が白のボルボ・セダンを見たとき、これだと思い込んだことが、間違いのもとだったことを、おんなの白いボルボ・ワゴンに乗りこんだ時に少々悔やんだ。トドムンドの社長はクルマ好きだから、ボルボといえばワゴンがほとんどであることをいちいち説明しなかったのだろう。曾根崎キッドはチャリンコおよび徒歩のひとであったから、クルマはセダンだと思ってしまっていたのだ。

「トドムンドの社長とは?」
「昔のオトコ。あたしが捨てたのよ。あのひとに訊けば自分が捨てたって言うでしょうけど」
 曾根崎キッドは3人目の知り合いができた。名前は吉沢さつき。
「ねえ、キッド。チャイでも飲んでいこうよ」
「だばこの自動販売機のところで止めて」
 
さつきはボルボを左に寄せ、その角まがったとこの店だから、と言ってクルマを出した。曾根崎キッドが角を曲がると、店の駐車場に白のボルボ・ワゴンは停まっていた。店に入った。中近東ぽい壁の塗り方で土で作った家を模してインド風のデコレーションがされていた。奥の大きいテーブルにさつきは座って店の人だろうか、親しげに話をしていた。曾根崎キッドが向かいに座ると「こちら、曾根崎キッド」とさつきが彼に紹介する。「えっ、キッド?」「ここのマスターのウタマロさん」「・・・・・・本名ではないよね、もちろん」「て、いうか、あなたも全然ちがうよね」「ミファソのマスターの・・・?」「いや、関係ないわよ、たまたまみたい。ただし、ゆうべは一緒に少しだけアバれたみたいよ」「あのマスターがどうかしましたか」彼とさつきは顔を見合わせにっこり笑った。曾根崎キッドは「?」だったが、様子をみることにしていると、さつきが口を開いた。「あの人は新世界キッドなのよ」(つづく)


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2018年02月15日

曽根崎キッドの日々 15

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「と、いうことは、曾根崎キッド?あなた」
 突然、おんながそういいだすから、曾根崎キッドはびっくり仰天してしまったのだ。話もしていないおんなからそんなこと言われたら誰だって驚く。今まではオナニー見られた中学生だったが、そんなことは一瞬にして忘れ、スに戻った曾根崎キッドはおこづかいを上げてもらう理由をママに理路整然と述べる灘中の生徒のようにクールな顔に戻っておんなに尋ねる。
  「その、と、いうことはの部分、差し障りがなけりゃ教えてくれないかな」言葉遣いまで賢そうな曾根崎キッドだった。
  「あはは、ごめんなさい、ごめんなさい。あなたのこと、トドムンドの社長にもう一度確認したのよ。ルックスとかね。そしたら社長、どうでもいいことばっかり言って肝心なことちっとも教えてくれなかったのよ。あいつは女も好きだけど男も好きだとか、突然別人化するとか、じらすセックスが好きとか、犬よりも猫が好きとか、こっちは人捜ししてるのにそんな話しかしないからあたし電話口で怒鳴ったのよ。そしたら、相変わらず怒ると可愛いな、なんていうから、その怒った声を久しぶりに聞きたかってん、とかいうでしょう。でもあたしも思い出したのよ。あの人ってヒトが真剣になればなるほど自分はふざけていかないと、場のバランスが取れん、なんてよく言ってたし、なんでもかんでもセックスがらみの話にするんだけど、その時はそれで妙に納得させられちゃうというか、ね。でもただひとつだけあなたに関してちゃんと、まあ、ちゃんとといっても、それが普通人捜しに役に立つとは思えないんだけど、ただ今は役に立っちゃったんだけど、社長が教えてくれたのはね、曾根崎キッドは何かに夢中になってる時はホンマのあほみたい、に見える。あ、これはあたしが言ったんじゃありませんからね。トドムンドの社長セッドね。」
 あいたたた、と曾根崎キッドは思った。蝉の交尾に熱中していた時、初対面の人間が一目でそれとわかる「あほ」だったとは。それにしてもトドムンドの社長のセックスねた好きはあるいみビョーキかもしらんなあ、と思うとこもある。ズブロッカ飲みすぎでへろへろになって半寝の状態のときでも、だれかがエロねたをふった瞬間、目ギンギンになって、さらに深いエロねたの嵐になっていく。とても1分前に口開けて寝てた人間と同一とは思えないし、あのおっさんにとっては世界の構図はすべてセックスで説明できるような気がする。ナガイの前にいた厨房のクミコの性格を「あいつはコレやから」と二本指の逆Vでおまんこ開くしぐさなんて、自己顕示欲の説明としてはこれ以上わかりやすいものはないな、と不覚にも感心した覚えもある。あのひとの、世の中をすべてセックスがらみのメタファーで表現してしまおう、という試み(いいように言えば)は慣れてないと客にもよくヒカレてるけど、それがセクハラにならないのはある種の才能かな、とも思う。
 「それとミファソのマスターにも聞いたのよ」
 「ミファソ?て?」
 「あなたが昨日一緒に暴れたおじいさん」
 「あぁ、ミファソって店かなんかの・・・?」
 「新世界の喫茶店よ」
 ミファソてぇ、それ、普通ドレミやろ、と曾根崎キッドは考えたが、まあ、なんでミファソかはまたおいおいおじいさんに聞くことにして。
 「と、いうことは、あなたが白いボルボの?」
 「そう。やっと会えたわね」
 「よかった」
 「だって、あなた、約束守らないんだもの」
 曾根崎キッドは昨日までにあったことを、分かってる限りおんなに話した。(つづく)

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2018年02月14日

曽根崎キッドの日々 14

「よし。では始めるで」
部下Bはカメラの三脚を用意した。すべてが整うとおんなは鏡を背に立つように言われた。部下Aはカメラを見、部下Bに合図をした後、ひと呼吸おいて、うやうやしくマタドールの一礼をし、おんなの前に立った。一本鞭を右手に持ち、左上に振り上げ一気に振り下ろした。おんなのワンピースが斜めに裂けた。そしてさらに数回鞭をクロスさせた。ワンピースはいくつかの布切れとなりおんなの足元に落ちた。おんなは震えていた。その震えがいい、と部下Aは思う。もっと震えろ。おんなはブラジャーをつけていなかった。腕を組んで胸を隠していた。腕をほどくようにあごで合図をすると、形の良すぎる胸が露になった。おんなは向こうを向くよう指示され、従った。カメラがおんなの後方45度くらいに移動する。おんなはまた胸を隠した。自分の姿を真正面から見ることになる。部下Aは鞭を左上に振り上げ固定した。おんなの顔に緊張が走った。手首だけを使って二度左右に振り下ろした。おんなの下着が床に落ちる。カメラはおんなの尻を上からナメた。その肉感を充分に記録した後、鏡にフォーカスを当てズームしていく。おんなの股間を写す。ペニスがあった。おんなはシーメールだった。最後に顔を鏡越しにズームする。恥と恍惚の入り混じった表情だった。部下Bは満足するとともに次の撮影に思いを馳せ、股間が充血してくるのを自覚した。

社長と呼ばれるおかまの男は、満足そうにDVDを眺めていた。「ほんま、ええ玉見つけてきたね。グッジョブ。それにあんたも今回がんばったな」
そう言われた部下Bは喜んでいいのか、喜ぶとまたあほなこと口走りそうで、あの脳天の痛みは忘れられないし、複雑な顔をして「はあ」と応えた。
「いや3回もようがんばったやん。これ3時間ぐらいのあいだなんやろ?」おかまの男は射精回数のことを言っているのだった。確かに部下Bはおんなの顔・胸・尻にそれぞれが一度目のような量をかけていた。
「それにこないだみたいに中に出してへんしな」
「客より先に中出ししてどーすんのよ」と一度目の撮影のDVDを得意そうに見せた時に怒られたのだった。
「このコが売れっ子になったらあんたにもボーナスあげるわ。2人でしっかり仕込むのよ〜ん。あんたちょっとこっちへ来てごらん」
部下Bは顔がひきつったが、こわごわ言われるままに、おかまの男のそばまで行った。
「頼んだわよ、期待してるからね〜ん」
そう言うと部下Bを顔を持って巨大な自分の胸に強い力で押し付けた。部下Bはつま先立ちになり、顔が半分ほどおかまの男の胸の中に埋まっていた。部下Aはにやにやしながらそれを見ていたが、部下Bのつま先に力がなくなりかけたところでおかまの男が部下Bを放してやると、まじめな顔でこういった。
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「イラマチオやられる感じに近いんちゃうか、それ」
部下Bはぜいぜいいいながら「そうっすね」というのが精一杯だった。それを見ておかまの男と部下Aは大笑いをした。(つづく)

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2018年02月13日

曽根崎キッドの日々 13

 本坊庭園は池の周囲が遊歩道で所々に休憩のためのベンチがあり、曾根崎キッドは飲みかけの缶ビールを持って大きな蓮の群生している前に腰掛けた。蝉が鳴いていた。みーんみんみんみぃーん。翻訳すると「やらして〜」だが、この鳴き声の切実さからすると「やらしてくでぇ〜」ぐらいだな。しかし、蝉はいつやっているのだろうか。やはり後背位なのだろうか。自分が牡蝉ならば牝蝉の羽根なんかにフェチなのだろうか。それとも羽根をかき分けたりするときにゾクッとくるのだろうか。あの蝉の腹部といわれる部分が前後にぐにぐに動いたりするのって挿入中にはごっつい刺激なんだろうか。しかし、そもそもお互いの生殖器はどこやねん。

 「あの・・・・・」「は・・・・・・・?」
 「ちょっと失礼しても・・・」「あぁ、どうぞ、もちろん」
 つばの広いストローの帽子を被ったおんなが突然話しかけてきた。蝉の交尾に夢中になっていた曾根崎キッドはおかんにオナニー見られたような感覚に陥り、たいへん恥ずかしく情けない思いで猫背だった。曾根崎キッドは端に少しずれ、おんなが座るためのスペースを空けた。
 
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 部下Aは壁一面の鏡の前でポーズを取っていた。闘牛士の服を着、手には一本鞭を持って鏡から視線を移すと鞭を振る。スツールの上に置かれたペットボトルが弾けとんだ。ペットボトルを拾いに歩く。大股で姿勢を正して、片膝をついてペットボトルを拾う。その時ノックの音がした。「どうぞ」
 部下Bがおんなの背中を押しながら入ってきた。「言うた通り、上玉でしょ」部下Bが得意げに話す。おんなは後ろ手に手錠をかけられ部下Bを睨んでいた。部下Aは部下Bに手錠を外すように言い、おんなに向かって「もう、これからは殴ったりせえへん。ただし、おれとこいつの言うことは聞かなあかん。今日はこれからお前を6時間ほど拘束する予定やが、もう少し長いかもしらん。お前にとって楽しいことではないかもしらんが、すべて受け入れたほうが苦痛は和らぐ。目の前の人間を喜ばすことだけを考えろ」
 おんなはしばらく黙って目を伏せていたが、頷いた。水滴が足元に落ちた。

 「よし。では始めるで」  (つづく)
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2018年02月12日

曽根崎キッドの日々 12

on the 4th day :
  
 四天王寺境内は早朝からテキ屋の人々で溢れていた。車が駐車場では収まりきれず、境内の中にまで入ってきていた。バンのテールゲートを開けるとそれがショップに早変わりという露店もあった。ここに住み着いているホームレスたちは自然に場所を空ける。曾根崎キッドはテキ屋の人々の手際のよさに見とれながら朝マックをしていた。老人と会う事になっていた。老人が身軽な足取りでやってきた。
「早いのう、若いの」「早起きは三文の得」「ふっるいのう」「あんたに言われたないっす」「わし、ちょっと知り合いみてくるわ。今日は・・」「一日ここにいます」
「あんたが昨日言うてた、ボルボのねえちゃん、来るかもしらんで」「ほんまにぃ」
  曾根崎キッドはひとりになって、自分拉致の現場へ行ってみた。マックのコーヒーはホットを買ってしまったので、半分ほど飲んだあと、早くもヤル気の太陽が四天王寺の気温を上げつつあったから冷たい缶コーヒーを買った。「いったい何度まで上げるつもり?」と太陽の方をうらめしそうに見た。
 その時、あの場面が頭の中で再現された。それは三つの影だった。二つはかなり大きく、もう一つ真ん中の影はそれに比べると小さかった。太陽の残像の中に真ん中の影が吸い込まれる寸前、おんなの顔が見えたような気がした。知っているおんなだった。

 午前中、曾根崎キッドは何をするでもなく露店のにーちゃん・ねーちゃん・おっちゃん・おばちゃんとたわいもない話をしたり、ビールを飲んだりして過ごしたが、三度ほど老人の姿を見かけた。何をしているのかわからないが、その移動の様子は精力的な印象である。昨日の一件があるから、普通のしじいだとは思わないが、見かけはやっぱりおじいさんなわけで、それが背筋伸ばして大股でとんとん歩く姿はやはり意外な気がする。忙しそうだし、今取り立てて何かを話す必要もない。曾根崎キッドはさきほど露店のおっちゃんが教えてくれた「本坊庭園」を訪れてみることにした。(つづく)
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2018年02月11日

曽根崎キッドの日々 11

 ヅラの黒スーツの背後から忍び寄って、一九の九の先端を指でつまんだ。ヅラの黒スーツは「あれ、どうしたのかな?」という素振りを見せ、右の方を振り返った。そのとき、曾根崎キッドはヅラの黒スーツの頭の動きとは逆方向にその九を摘んだ指を廻した。
 ヅラは見事にずれ、一九の九の先端がヅラの黒スーツの顔に覆いかぶさった。
 「うわっ」とヅラの黒スーツが叫んだ。スキンヘッドが振り返って、事の次第を把握したとき、「・・あにき・・」と言葉にならないような言葉を発した。そのときだった。かかとが地面に着いた老人の身体が、一度すっと沈み、そしてスキンヘッドの腕を奇妙な形で捻りあげながら浮き上がってきた。
 「あいてててて」スキンヘッドの腕は力を失い老人の身体の動きに同調し、引っ張られて前のめりになった。そのとき老人の身体が逆方向に、スキンヘッドに向かって素早く動いた。スキンヘッドの手首だけはその動きについていったが身体は前へ倒れつつあった。矛盾する動きは、より弱い部分を庇う結果となる。スキンヘッドの手首は老人にきめられ、身体の後ろへ、下へと引っ張られ、スキンヘッドの身体は空気の壁に跳ね返されたかのようにバウンドし、体中の関節の力が消え、後ろにもんどりうって倒れた。倒れる際にレジの角で後頭部をしたたか打った。
 
 「けけけ」という高笑いを老人は聞いた。あにきと呼ばれた黒スーツは九をのれんのようにかき分けスキンヘッドが後頭部を押さえ地面でもがき苦しんでいるのを見た。「おのれら・・」黒スーツは老人に向かって近づいた。しかし今、老人は目だけではなく、全身がワイルドだった。黒スーツのストレートを身体を沈めてかわすと、下からあごめがけて掌手のアッパーがきれいに決まり、黒スーツは口から赤い泡を吹きながら一度空中に浮き、どっと倒れた。

 曾根崎キッドは元に戻りつつあった。最後に黒スーツのヅラを取り外し、自分の頭に着け「こんど〜ですっ」と叫ぶと頭を振ってそのヅラを飛ばした。一九のヅラは吹き抜けになっている中央の空間を四階分、きれいな放物線を描いて落ちていき、歩いていた子供連れの家族の目の前に着地した。「ぎょっ」とした顔で父親の男が上を見上げていた。(つづく)

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2018年02月10日

曽根崎キッドの日々 10

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on the 3rd day:
 月と通天閣が圧倒的な存在感でそこにあった。ジャグジーで泡まみれになりながら、曾根崎キッドはアホみたいな顔でそれを眺めていた。手首はまだひりひりしたが、お湯に浸け続けているとそのうち痛みも忘れた。
 徒労に終わった一日だった。四天王寺には朝と昼からと二度行ってみたが手がかりは掴めなかった。また明日行ってみよう、と曾根崎キッドは思った。明日は市が立つという話だった。おんなも今日は現れず、一昨日からの一連の出来事がどうも現実感が伴わず、だから曾根崎キッドは自分の仕事のことだけを考えようとした。しかし、そうしたところで謎は解けないし、手がかりもなく、よくよく考えると昨日のおんなの名前さえ聞きそびれていたのだった。目の前にそびえ立つ通天閣は、曾根崎キッドにとってこの仕事が困難なフェーズに入ってしまったことを威圧感を伴って象徴しているかのようだった。ただし、パチンコだけは1万5千円勝ったから2日ほどは経済活動なしで仕事に専念できることになる。
 
 済んだことは忘れ、ビールでも飲もうと思い、曾根崎キッドは売店や店舗のエリアへとやってきた。居酒屋へと入り、生ビールと枝豆・冷や奴、そして鯖の塩焼きとポテトサラダと焼き鳥も頼んで、5秒ほどで出てきたビールで喉を直撃する。しゅわしゅわの泡がからからの喉粘膜をこじあける。その後ふうっと
ため息が出た。曾根崎キッドがビールから土佐鶴の生酒へ移行し、鯖の塩焼きのおなかんとこをレモンと、醤油をたっぷりかけた大根おろしで食べていたとき、店の入り口辺りで大きな声がした。ガラスが割れる音もした。曾根崎キッドは気にはなったが、今、鯖の一番旨いとこでもあったし、土佐鶴もまだ1/3ほど残っていたから、そちらに注意は向けながらも、鯖の骨をしゃぶりつづけていた。また大声が聞こえた。はっきりは聞き取れなかったが「・・・・・・・・殺すぞ・・・・・」と聞こえた気がしたから、振り返って身体を斜めに伸ばして入り口を見たのだった。老人が黒のスーツのふたりに向き合っていた。店員の若者が少し離れたところにいた。黒スーツのスキンヘッドの方が老人の胸ぐらを掴んでいた。もうひとりの男はキダタローぐらいの見た瞬間わかるヅラで、しかも一九だった。ヅラならもっと普通の髪型選べよ、と曾根崎キッドは思ったが、それは嗜好の問題。スキンヘッドはかなりガタイが良く、老人は胸ぐら掴まれ、つま先で立っていた。
 老人は、「すんませんでした、すんませんでした」と繰り返していた。店員も一緒に頭を下げていた。老人の目は、しかし、ワイルドだった。曾根崎キッドはいたずら心が湧き上がってくるのを感じた。知らない間に立ち上がってすすすと黒スーツの後ろへと近づいた。そのとき老人と目が合って、その目は何かを言おうとしていたのだが、曾根崎キッドのいたずら心はもう臨界点を超えていた。

 曾根崎キッドの手は後方からヅラの黒スーツの頭部へと伸びた。(つづく)
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2018年02月09日

曽根崎キッドの日々 9

 パチンコ用には5千円取っておけばだいじょうぶだろう。おんなに、スニーカーがいいと言うからスニーカーを買って、時計を見ると午後一時だった。
 「きみはおなかすいてないの?」「ビール飲みたい」「ええな」「串カツは?」「ごっつええな」
 おんなはジャンジャン横丁の中へ曾根崎キッドを案内した。何軒か有名な串カツ屋があったのを思い出した。行列の出来ているやや大きい店ではなく、こじんまりした店へと曾根崎キッドは連れて行かれた。24時間ぶりのメシだったから、そして日差しももうかなり強く、汗も出ていたし、一杯目の生ビールは、この世のものとはおもえないぐらい旨かったわけだった。曾根崎キッドは、その店が魚介類に強い店であることを素早く見抜き、ホタテやら、ゲソやらたこやら、サザエやらを食べまくったわけだった。おんなはというとビールを、飲みたいと自分では言ったくせにさほど感じ入ることなく淡々と同じペースで ジョッキを口に運んでいるのだった。

 お腹が落ち着くと、曾根崎キッドは自分の任務を思い出し、しかし、この街には知り合いはひとりもいず、どうすればその白いボルボのおんなと出合えるのか、と考えていた。隣のおんなに話そうか迷ったが、今はそうすべきではないと思った。お腹も一杯になったし、コーヒーでも飲みにいって、それからこのおんなは帰すべきだと、曾根崎キッドは考えた。四天王寺から新世界は目と鼻の先であるから、白いボルボのおんなが新世界に来ないとも限らない。軍資金はパチンコでなんとかなるだろう。あるいは、何度も四天王寺まで行ってみるか。
 焦ったところでどうしようもない。まだ焦る段階でもない。曾根崎キッドは風呂はいってきれいになろうとスパ・ワールドへ行くことにした。「今なら千円」という話だったし、仮眠もできたから。
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 スパ・ワールドへ行くことをおんなに告げるとおんなは、帰る、と言った。曾根崎キッドは、助けてくれたことに礼を言い、まだ本格的に信用するにはいたらないが、この街での唯一の知り合いにまた明日も会ってくれるかということを確認して別れた。おんなの歩く後ろ姿は無表情なその顔とは違って筋肉の躍動感を感じた。(つづく)
posted by 浪速のCAETANO at 05:53| 大阪 | Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月08日

曽根崎キッドの日々 8

 ということは、このおんなは少なくとも曾根崎キッドの味方ではない、と考える方が妥当である。しかし、先ほどから観察する限り、おんなの中には悪意はこれっぽっちも見当たらない。しかし、このまま一緒にいることはやっぱり何かよくないことを引き起こすのではないか。
 「きみは戻った方がええんちゃうかな」「 戻る?ああ、どっちでもええよ」「靴ないの?」「え?、ああ、そうね」「おれが買ってあげるわ」「ほんま?うれしい」「じゃあ、いこう」
 思惑と反対のことになることが、曾根崎キッドは多かった。

 曾根崎キッドはパンツのポケットを探ってみた。500円玉が1個サイド・ポケットから出てきた。トドムンドの社長から経費として5万円預かってきたのだ。このおんなの一派(かどうかはわかんないが)に奪われたのは間違いなかった。
 おんなに靴を買ってあげる、とは言ったものの、500円じゃあしょうがない。曾根崎キッドはいちかばちか経済活動に懸けようと思った。
「パチンコ、この辺にある?」「ちょっといったところ」「行こう」
 おんなに案内され、通天閣がついそこに見えるパチンコ屋に入る。曾根崎キッドはハネものを探した。見たこともないようなクラシックな台が並んでいて、どうしようか、と迷ったけれども、いちかばちかでここへ来たわけだから、いちかばちかで台を選んだ。おんなは隣に座った。「じゃあいくよ」
 大当たりは意外に早くやってきた。店のにーちゃんにマイルドセブンエクストラライトを玉を渡して買ってこさせた。小一時間ほどで玉は三箱ほどになった。その間おんなはじいっと膝に手を置き曾根崎キッドを見てい
た。
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 ふと、曾根崎キッドはパチンコ台に自分の顔が写っているのに気づいて「うわ」と叫んだ。鼻血が一本唇まで垂れて固まっていた。おんなの方を見、顔を指差して「相当やばい?」と訊くと「相当やばい」と答えながら初めて能面のような無表情が緩んだ。「ちょっとトイレ行ってくるわ、きみが打っといて」席を替わり顔を洗って戻ってくれば、おんなも大当たりを出していた。大当たりが終わって換金したら約2万円あった。 (つづく)
posted by 浪速のCAETANO at 04:40| 大阪 ☁| Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月07日

曽根崎キッドの日々 7

 優先順位は、とにかくここから出ることだった。曾根崎キッドは自由になった両手を愛おしみ、一段飛ばしで階段を上り始めた。二階分上ったところで目の前にむきだしの足が見えた。驚いて立ち止まり、見上げるとおんなだった。オレンジのミニのワンピースを着てきれいに化粧をし、肩までの巻いた薄い栗色の髪だった。無表情ではあったが敵意は感じられなかった。話しかけてみた。
 「ここから出たいねん」「ここからだけでいいの?」
 妙なことを言うな、と曾根崎キッドは一瞬思ったが「うん、そうやねん、わかる?」と尋ね直す。
 「こっち」
 おんなは先にたって階段を上り始めた。曾根崎キッドはそれに続いたが、おんなのスカートの裾がちょうど顔の前にあって妙な気分だった。それでもおんなに付いて四階分ほど上るとドアがあった。おんなが開け、曾根崎キッドが続いた。歩道橋に出た。かなり長いアーチ型の歩道橋で下は動物園だった。動物園を超えて、屋台のならんでいる一角に降りた。
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 いろんな演歌が入り混じって聞こえていた。おっちゃんらがこの暑さのなかでおでんやモツ煮をつつき、焼酎を飲んでいた。曾根崎キッドも急に空腹を覚え、おっちゃんらの仲間入りをしようと思ったが、おんなの存在はこの雰囲気にはどうもそぐわない。それにおんなは裸足だった。
 
 頭を整理してみる。曾根崎キッドは何者かによって拉致された。そいつらは曾根崎キッドの手を縛っていたわけだから、なんらかの悪意を持っていた。しかしそこからこのおんなに導かれて逃げ出した。しかし、このおんなは曾根崎キッドが拉致されていた建物の中にいた。と、いうことは・・・・・・・・・・・・・。    (つづく)
posted by 浪速のCAETANO at 00:31| 大阪 ☀| Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月06日

曽根崎キッドの日々 6

 曾根崎キッドが意を決してドアに体当たりをするとドアは開いた。人の気配はなく、直感的にここは地下だと曾根崎キッドは思い、廊下を走った。手が後ろにあるからやや斜交いになって小走りな自らの姿を「おかまみたいである」と曾根崎キッドは思ったが「しょうがないじゃないのよ」と早くも順応しつつある人格のある部分の声に「それもそうだね」と納得しながら廊下の突き当たりまでやってきた。やはりここは最下階で上る階段だけがあり、曾根崎キッドはいつもは一段とばしで上るところを一段ずつ「足上げピッチ走法」で上ったのだった。
 
 それにしてもこの後ろの縛めを解かないことには今後に関していやな感じであることはわかっていたし、ふと冷静になると鼻の詰まりが「もう限界」だった。ここはなんとしても手を自由にしなければ。曾根崎キッドは階段の手すりの角がギザギザなのに目をつけ、階段を上るときに手を縛っている紐をそこにこすりつけた。根気が要ったがなんとかなった。加減を間違えて手首を傷つけてしまったが、今はそんなことよりも鼻の穴問題の解決が先だった。いつもはティッシュをねじりこんでぐるっといくのだが、今は爪のある右手人差し指で同じようにする。曾根崎キッドは鼻の穴がけっこう大きい方だったから、人差し指を突っ込んでぐるっといってみたところ、「あいたたた」鼻の内側の粘膜を引っ掻いてしまった。鼻血が出てきた。せっかく鼻クソクリアしたのに、鼻血が固まっちゃ元も子もない。
 
 しかし、次の優先順位は、とにかくここから出ることだった。
 
曾根崎キッドは、どうして自分がこんな目に合ったかはわからないでいた。見当もつかなかった。トドムンドの社長からは、「四天王寺の駐車場で白いボルボに乗ったおんなに会え。そのおんなに協力してあるものを受け取ってくれ。待ち合わせの合図は無糖のコーヒーである」とだけ言われていた。「みなまで言うな、うっとーしい」というのがトドムンドの社長の口癖であるし、人にものを言うときも「あそこんとこ、これで、な」などと外部の人間なら「はあ〜?」なことも多く、トドムンドのみんなはなんとなく想像でやっているのか、それでもなんとかやれているから不思議だ。基本的にすぐ自分が言ったことを忘れるおっさんだから、ひょっとして曾根崎キッドに言ったことまで忘れていたら・・・などと、ぞっとすることもちらりと頭の片隅に浮かんだが、なんぼなんでもそこまで物忘れは進行していないだろうと気を持ち直した。      (つづく)
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2018年02月05日

曽根崎キッドの日々 5

 「な・ん・や・と」
 社長と呼ばれたおかまの男は立ち上がると、へらへら笑っている部下Bを部屋の角まで追いつめた。部下Bはそれでもうすら笑いをうかべていたが、そのうち感情と表情が乖離し、アタマ悪い子の顔になったその時、頭を脇の下につかまえられDDTで床に打ち据えられた。あまりに見事に決まり、部下Bはしばらくの間垂直に頭で立っていたが、突然身体のすべての力が抜け、ぐにゃりと「く」の字に折り曲がって動かなくなった。おかまの男は立ち上がり、何事もなかったかのようにソファへ戻った。部下Bは最近この仕事を始めたばかりだった。震えている部下Aにおかまの男は
 「ええかげんにしとかな、次はあんたが女やで」とドスの効いた声で言った。「さ、お仕事お仕事、この子にもしっかり教育してね〜ん。死んでないし」
 部下Aは口から泡を吹き失神している部下Bの足を持って引きずり後ずさりしながら部屋を出て行った。
 おかまの男は、携帯電話をポケットから取り出し、どこかへかけ話しだした。「ゆうちゃん、きのうのこはまだ・・・・・・・・・」



 暗く息苦しかった。原因はわかっていた。鼻が詰まっているのだ。空調が寒いぐらいに効いていてハナ水が垂れてそれがハナクソ化して鼻の穴を塞ぎつつあった。曾根崎キッドはただでさえ、いつも片方の鼻が詰まっているのだが、今はその詰まっていないはずの右の鼻の穴にハナクソがどんどん増殖していた。手は後ろ手に縛られ、自由が利かなかった。ちょっと考えだすと、もうパニックになりそうだった。頭がかーっと熱くなったが、しかし足は自由だったので、なんとか立ち上がりドアをめざした。目は暗闇に慣れて少し明るい部分を確認した。そこがドアだった。(つづく)


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2018年02月04日

曽根崎キッドの日々 4

on the 2nd day:

 陽炎がたちあがっていた。「水、撒いても撒いてもわややな」珈琲屋の老店主が店のカウンターの中にいる妻に聞かすでもなく呟いた。「おとうさん、もう三時半よ。商店街の集まりでしょ」「ああ、そやった」
 老店主はギャルソン・エプロンを外し、カウンターの上のたばこを取り、外へ出た。
 
 ビルの一室から通天閣が見えている。反対側の窓からは超高層マンションの土台の一面の白い壁が見える。
 おかまの男が部下たちに向かって尋ねる。「ね〜え。来週のショーの子たちは手配ついたの〜お」
 部下Aが答える「いえ、そやから今週の子らの髪型と化粧変えてやらなあきません」
 「何週間、女ばっかしつこてんのよ。あんたら、ちゃんと仕事してんのか。再来週までにはぜったいに見つけといで」
 「はあ、そう言われますけど、半玉の絶対数が少ないし、半玉でもちんちんまだ切ってないのんなんかごっつレアでっせ」
 「そ〜や〜、だ・か・ら、値打ちあるんやないの。わたしもあっちこっち手は打ってるけど、これはあんたらの仕事やからね。いいこやから、再来週までには探しといてね〜ん」
 部下Bが軽口をたたいた。「それやったら、社長がやったらどうです。趣味と実益って感じ?」
 部屋の空気が一瞬にして凍り付いたが、部下Bはギャグの後、観客からの反応を待っている漫才師のように何かを期待した顔で誰かからの反応を待っていた。 (つづく)


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2018年02月03日

曽根崎キッドの日々 3

 視界の下の方に影が見えたが気にはならなかった。まだ十分ほど余裕があるはずだった。影が近づいてきていた。その影は三つあった。その近づき方に少し違和感を感じ、顔を太陽から正面に向けた時、その影の動きが速かった。曾根崎キッドの目には太陽の残像が残っていて、真ん中の影の動きはその残像の中に吸い込まれた。その時首筋に鈍痛が走った。

 十分ほどして、鳥居から白いボルボ・ワゴンがゆっくりと境内へと入ってきた。そしてさきほどボルボ・セダンが停まっていた場所へとスムーズにバックで停まった。右のドアから女が降りてきた。仕立てのいい軽そうなツーピースにバックバンドのパンプスを履き、大きめのサングラスをしていた。辺りを見回すと、表情も変えず自動販売機のところまで大またで歩き、無糖の缶コーヒーを買った。リングを引っ張って開け、口をつけそして辺りを見回した。それから女はゆっくりゆっくりコーヒーを飲み、もう一度辺りを見回し、意を決したかのようにボルボに乗り込んだ。急発進し、タイヤを鳴らして駐車場を出た。左の窓がするすると開き、何かが飛び出した。それは弧を描いて、自動販売機のそばのゴミ箱へと吸い込まれた。コーヒー缶だった。白のボルボ・ワゴンは鳥居の前の信号を無視し上町筋を南に折れて走り去った。  (つづく)

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2018年02月02日

曽根崎キッドの日々 2

on the1st day:

 曾根崎キッドが地下鉄の出口を出たとき、ある匂いを感じた。特に好きとか嫌いとかの判断の前にそれは鼻の穴からから脳のどこかへチョクで到達し、かたちを変えた。もう一度その匂いを思い出そうとしたがもう無理だった。無理ではあったが、その匂いの存在は曾根崎キッドに刻み込まれた。
 
 曾根崎キッドは空腹を感じ、トドムンドの社長が「食べるといいよ」と云っていたとんかつ屋をさがした。「末広」というその店はすぐに見つかり、とんかつ定食を食べた曾根崎キッドは四天王寺へと向かった。制服の女子高生たちが帰っていた。曾根崎キッドは四天王寺にやってきた最初の日から女子高生につきまとわれたら、どうしようか、仕事できないじゃないか、と懸念したが、彼女たちはおしゃべりに夢中でヨコモジのたぶん大阪の芸人だと思うが、その話にキャッキャ・キャッキャで曾根崎キッドのことを見向きもしなかった。
 
 鳥居をくぐって境内へ入る。しばらく歩くと駐車場があった。曾根崎キッドは真っ白のボルボをさがした。奥から二台目に白のボルボ240のセダンが停まっていた。約束の時間にはまだ十五分ほどあったから、目の前にある自動販売機から無糖の冷たい缶コーヒーを買い、たばこに火をつけた。
 
 陽射しがやや強く、曾根崎キッドはサングラスを忘れたことを後悔したが、昨日まで雨続きだったこともあって、やっぱりお天気はいいなあ、と眩しかったが太陽に向かって目を細めた。視界の下の方に影が見えた。                                      (つづく)
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2018年02月01日

曽根崎キッドの日々 1

「キッド meets the other キッド」その1
 曽根崎キッドはトドムンドの社長に頼まれて四天王寺まで行くことになったが、一週間帰ってこなかった。デッドエンドストリートのみんなは少し心配していたが、でもきっと曽根崎キッドのことだから、ふらっと戻ってくるよ、あるいは、もう帰ってきてるのかもしれないが、気が乗らずに来ないのだろう、などと無責任に噂していたその夜、曽根崎キッドが帰ってきた。
 
 髭が伸び放題で変な寝癖がついてて、ふらふらとトドムンドのドアを開け、アイちゃんが思わず「ぎゃっ」と声を上げたとき、そんなことにはかまわず、曽根崎キッドは「おじやが喰いたい」と声を漏らして、それから倒れ込んだのだった。
 
 それから24時間きっかり3階のソファで寝て、目を醒ましたときにはもうトドムンドの営業が始まっていたから、抜き足差し足でこっそり階段を降りて1階までやってきたところで客のオンナと出くわし、また「ぎゃっ」と叫ばれたわけだった。
 
 「キッド、髪の毛すごいで」「あぁ、そうか、そうやった」「サウナでも行ってくる?」「そやな、あ、それとこれ社長に頼まれてた、例の」「なにこれ?」「いや、例の、って言えばわかるねん」「はい、わかりました」  
(キッドの身になにがあったのか・・・・・・・?  つづく)
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posted by 浪速のCAETANO at 14:46| 大阪 ☔| Comment(0) | 曽根崎キッドの日々(作り物・続き物お話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする